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メールマガジン2020年01月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2020年01月 Vol.132

1.人事・総務ニュース

時間単位の取得も可能に ~介護・子の看護休暇~

 育介休業法施行規則・指針の改正により、介護休暇と子の看護休暇について1時間単位の取得を可能とします。

 事業主に十分な準備期間を確保させるため、改正施行規則などの施行は令和3年1月1日を予定しています。

 介護休暇は要介護状態にある家族の介護のため、子の看護休暇はケガ・病気等子の世話をするため、1年度5日(対象者が複数のときは10日)を限度に付与されます。現行の仕組みでは、全日のほか、「半日」単位の取得も認められています。

 今回の改正では、取得単位をさらに柔軟化し、原則として始業または終業と連続する「1時間単位」とします。ただし、個々の労働者の事情も考慮し、始業・終業と連続しない時間単位取得も可能とするよう指針に明記し、事業主に配慮を求めます。

 このほか、現在(改正前)は「半日単位」での休暇取得の対象から除外されている「1日の所定労働時間が4時間以下の労働者」に関しても、時間単位の休暇利用を可能とする方針です。


パワハラ防止へ指針案 ~来年6月施行に向け~

 改正労働施策総合推進法により、事業主にパワハラ防止の措置義務が課されますが、施行予定日が令和2年6月1日に決まりました。中小事業主は、令和4年3月31日まで努力義務という扱いです。

 改正法の施行に向け、厚生労働省は「事業主が講ずべき措置等に関する指針案」を作成しました。

 指針案では、パワハラを①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されるもの――の3要素を満たすケースとしています。

 就業環境が害されるとは、「平均的な労働者の感じ方」を基準とします。具体的な例として「他者の面前での威圧的な叱責」「能力を否定し罵倒するような電子メールの送信」等を示す一方で、「懲戒処分を受けた労働者に個室研修を受講させる」等は該当しないとしています。

 併せて、取引先の労働者や顧客などからの著しい迷惑行為についても、雇用管理上の取組を求めています。


全学歴で過去最高を更新 ~経団連・2019年初任給調査~

 経団連と東京経営者協会は、2019年3月卒業者を対象とした「初任給調査」をまとめました。すべての学歴で過去最高額を更新し、大卒21万7981円(対前年比0.76%増)、高卒17万932円(同1.05%増)となっています。

 決定に当たって考慮した要因は「世間相場」(27.9%)が最も多く、「在籍者とのバランスや新卒者の職務価値」(21.1%)が続いています。

 2019年の卒業者が入社した時点で、東京の最賃は985円でした。17万円は172時間分に相当し、月の所定労働時間と変わりません。「最賃の影響から、2~3年前の初任給額では通用しない現状にある」(賃金システム研究所赤津雅彦所長)という指摘もあります。



2.職場でありがちなトラブル事情

ライバル社に便宜と懲戒解雇 ~懇意の取引先から紹介求められ~

 出版社で編集業務を担当していたAさんは、取引先の社長さんから新雑誌創刊をサポートするよう依頼を受けました。鋭意、プロジェクトの立上げを図りましたが、自社には対応できるスタッフが見当たりません。

 日頃から懇意にしていた取引先にご迷惑をかけるわけにはいきません。苦渋の選択で、事情を説明したうえで、関連分野の経験豊富な同業他社を紹介しました。

 ところが、この話が回り回って、自社の社長の耳に達しました。「ライバル会社に便宜を与えた」とカンカンの社長は、懲戒解雇を言い渡しました。

 弁明に対して会社側が聞く耳を持たないため、Aさんは紛争調整委員会にあっせんを申請しました。

従業員の言い分

 他社を紹介したのは、わが社にとっても重要な取引先にご納得いただき、関係を維持するためです。私自身、何の利益も得ていないし、会社に実損は発生していないはずです。

 それなのに、何ら釈明の機会も与えることなく、一方的に懲戒解雇とする処分は明らかに不当です。慰謝料1年分を求めますが、世間相場に沿う金額であればこだわりません。


事業主の言い分

 いろいろ複雑な事情があったとしても、上司に一言の相談もなく、顧客にライバル企業を紹介するのは、重大な背信行為というほかありません。

 さらに、日頃の勤務態度も不良で、最後の1カ月ほどは出勤もしていない状況だったので、処分は当然です。金銭補償等に応じる気持ちはさらさらありませんが、本人が「自主退職で処理したい」というのであれば、そのくらいの配慮はやぶさかでありません。


指導・助言の内容

 事業主に対して、「従業員の独断先決行為(顧客へのライバル社紹介)のほか、勤務態度不良等の事実も考慮し、懲戒解雇に処したい」という心情は理解できるが、「現実に裁判になれば、懲戒の有効性を立証することが容易な事案ではない」点を説明しました。  そのうえで、「無料のあっせん制度の段階で、円満な解決策を探ったらどうか」とアドバイスしました。


結果

 会社側が金銭補償等に応じる意思を示し、退職事由は会社都合とし、賃金の2カ月相当額を支払うことで双方が合意しました。



3.連合総研「第38回・勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート」

 時間外労働を適切に管理(割増賃金の支払い、健康への配慮)する前提として、労働時間を正確に把握する必要があります。

 連合総研が民間企業勤務の20~64歳の労働者を対象に実施した調査結果によると、「客観的方法(タイムカード・ICカード、パソコン記録)」によるという回答が全体の76.2%を占めました。

 その一方で、「自己申告」方式も、まだ17.7%存在します。この中には、勤務形態(外勤等)からいって客観的把握が困難な労働者も含まれるでしょうが、会社側が必要な管理体制整備(機器導入等)に後ろ向きなケースも少なくないと考えられます。

 自己申告方式が適用されている労働者は、客観的方法の対象者と比べると、「会社の時間管理がルーズだ」と感じる傾向が強いようです。残業手当未申告があるかという問いに対し、前者(自己申告)の労働者は、3割強が「イエス」と回答しています。




4.身近な労働法の解説 ~職安法改正に伴う求人不受理~

 ハローワークは、原則としてすべての求人を受ける義務がありますが、法改正により一定の労働関係法令違反のあった求人者等の求人を受理しないことができるようになります。

1.改正の概要

 ハローワークは、求人内容が違法な場合等を除いて、すべての求人を受ける義務があります(職安法5条の5)。この規定が改正され2020年3月30日に施行されます。 これまでも、学卒者向けの求人については、一定の労働関係法令違反の求人者による求人について、受理しないことができるとされています(若者雇用促進法)。 今回の改正では、一般の求人についても、一定の労働関係法令違反の求人者や暴力団員等による求人を受理しないことができるようになります。また、職業紹介事業者等においても、ハローワークと同様に、受理しないことができるとされます。


2.不受理の対象とする違反の程度

(1)労働基準法および最低賃金法のうち、賃金や労働時間等に関する規定
 ① 過去1年間に2回以上同一条項の違反について是正指導を受けている場合
 ② 対象条項違反により送検され、公表された場合
 ③ その他、労働者の職場への定着に重大な影響を及ぼすおそれがある場合
 (社会的影響が大きいケースとして公表された場合等)

(2)職業安定法、男女雇用機会均等法および育児介護休業法に関する規定
 ① 法違反の是正を求める勧告に従わず、公表された場合


3.不受理の対象とする期間


4.対象条項(一部を掲載)

 中小企業においては、いよいよ働き方改革が本格化します。労働関係法令違反は求人や採用、定着、退職後のトラブル等に影響しますので、適切な労務管理が求められます。



5.実務に役立つQ&A

1日の休みでも申請可能か ~雇用保険の介護休業給付~

 親の介護で年休を消化していた従業員から、介護休業を取りたいという話がありました。休業は長引かないということですが、無給の休業日が1日でもあれば介護休業給付の対象になると考えていいのでしょうか。


 介護休業給付金は、「支給単位期間」ごとに支給されます。休業をした日から1カ月ごとに区切った期間です。

 

 支給単位期間は、就業していると認められる日(全日休業日以外の日)が10日以下であることが条件です。支給単位期間の日数が30日であれば、全日休業日が20日必要になります。

 

 休業終了日を含む支給単位期間については、就業していると認められる日数が10日以下であるとともに、さらに全日休業日が1日以上あることが条件です。

 

 短期(30日未満)の休業をした場合、その期間全体が「休業終了日を含む支給単位」に該当するため、後者の条件に基づき判断することになります。


6.助成金情報 65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)

 定年延長や継続雇用制度などにより、65歳以降も継続雇用する措置を新たに導入した事業主に支給される助成金です。新たに導入する措置は3つあり、措置によって、また、年齢の引上げ幅や60歳以上の雇用保険被保険者数によって支給額が決められています。


1.対象となる措置と支給額

 次のAからCの3つのうちいずれかの措置を、就業規則または労働協約に規定して実施した場合に受給できます。1事業主あたり1回限りであり、定年引上げと継続雇用と制度の導入を合わせて実施した場合は、どちらか高いほうの額のみ支給されます。

A:旧定年年齢を上回る65歳以上への定年引上げ
B:定年の定めの廃止
C:希望者全員を対象とした旧定年年齢および継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度


2.対象となる事業主の要件

1.支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続して雇用されている者であって、60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること
2.定年引上げ等の措置の導入にあたり、専門家等へ就業規則の作成を委託した委託費などの費用を払っていること
3.高年齢者雇用推進者の選任に加え、高年齢者雇用管理に関する措置を、次のいずれかのうち一つ以上実施していること
 ① 職業能力の開発および向上のための教育訓練の実施等
 ② 作業施設・方法の改善
 ③ 健康管理、安全衛生の配慮
 ④ 職域の拡大
 ⑤ 知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進
 ⑥ 賃金体系の見直し
 ⑦ 勤務時間制度の弾力化
その他各雇用関係助成金に共通の要件等も必要となります。



3.受給手続

 定年引上げ等の措置を実施した日の翌日から起算して2カ月以内に「65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)支給申請書」に必要な書類を添えて、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の窓口に申請します。



7.今月の実務チェックポイント  ~増える技能実習生~

 最近の外国人雇用、特に製造業では外国人技能実習生のニーズが急激に増加しています。また、地方では若年層の働き手の減少などで、今まで外国人雇用を考えたことがないような企業でも、真剣に検討せざるを得ない状況となっています。

 下記の図は、ここ最近の日本に滞在する技能実習生の推移をあらわしたものです。2017年までは実測値で、それ以降は同じ割合で推移した場合の予想となります。技能実習には1号と2号があり、1号は大企業などが主に活用する企業単独型、2号は中小企業が事業協同組合などを通して受け入れる監理団体型です。ちなみに(イ)とは最初の1年目にあたる技能実習1号、(ロ)とは2~3年目にあたる技能実習2号のことです。


 この図からは、大企業、中小企業ともに現場で働く人材が大幅に不足しており、その分を技能実習生で補おうと努力している姿が見えてきます。技能実習制度は初めて外国人を雇用するような場合には、とても有益な制度ですが、最長でも5年後の帰国が絶対とされており、原則として正社員採用などはできません。いわば一時的な人材としかなりえず、人が成長して企業の戦力となるような本質的な解決策には至りません。特定技能もできたことで技能実習生からの長期雇用も可能なると言われていましたが、現状では2業種のみが許可されておりまだまだ道は遠そうです。

 「人手不足=外国人で補う」の図式ではなく、製造工程の見直しによる効率化、オートメーション化などの本質的な解決が求められており、この部分での優秀な外国人材の活用がより活発化することを願っています。

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