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メールマガジン2020年02月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2020年02月 Vol.133

1.人事・総務ニュース

第1段階は100人超規模が対象 ~社会保険の適用拡大~

 年金関連について、通常国会に公的年金と企業・個人年金の双方について改正法案が提出される見通しです。

 「本丸」の公的年金ですが、社会保障審議会では年末に議論の整理を行いました。

 被用者保険の拡大に関しては、令和4年10月に100人超規模、令和6年10月に50人超規模まで適用することを基本とします。短時間労働者(4分の3未満)への適用要件に関しては、1年以上雇用見込みの勤務期間要件を撤廃するとしています。

 年金の支給開始時時期については、選択の幅を60~75歳に広げます。60歳代前半の在職老齢も調整基準を引上げ(47万円)、就労を支援します。

 企業年金関連では、確定拠出年金の中小企業向け制度の拡大(簡易型DCの対象範囲を300人以下に拡大など)等の改正を予定しています。


施行半年で219人 ~特定技能の外国人受入れ~

 総務省の発表によると、「特定技能1号」の資格で在留する外国人数は、9月末現在、全国で219人にとどまっています。

 平成31年4月にスタートした「特定技能資格制度」は、介護、建設、産業機械製造業、外食など人手不足が顕著な14分野に限り、外国人の就労を認める仕組みです。

 都道府県別で最も多いのは岐阜の29人で、愛知24人、大阪20人と続きます。一方、人数ゼロは21県に上り、人手不足の深刻な地方で苦戦が目立ちます。国籍は、ベトナム93人、インドネシア33人、フィリピン27人など東南アジアが上位を占めました。


高齢者の安全対策推進へ ~ガイドライン案を提示~

 厚労省設置の有識者会議は、70歳までの就労促進に向け、職場環境整備のガイドライン案を作成しました。

 労災による死傷者数(休業4日以上)のうち、60歳以上の占める割合は10年間で8ポイント上昇し、2018年には26%に達しています。今年6月の閣議決定でも、「サービス業等を中心とする高齢者の労災防止のための取組を推進する」よう指摘していました。

 会議では、先進企業等のヒアリングも踏まえ、高齢者の安全・健康について幅広く検討し、企業が実施すべきガイドライン案をまとめました。体制整備とリスクアセスメントを、環境整備を進めるうえでの両輪と位置付けています。

 リスクアセスメントについては、身体機能低下による労災発生リスクを事例やヒヤリハットから洗い出し、優先順位の高いものから対策を講ずべきとしています。体力・敏捷性が低下するため、注意・集中力を必要とする作業時間の制限が有効であり、短時間勤務・隔日勤務・交代制勤務等の選択肢を広げるべきと指摘しました。

 安全衛生教育に関しては、映像などの情報を活用し、経験のない業務・職種に従事する際には、特に丁寧なジョブトレーニングを実施するよう求めています。



2.職場でありがちなトラブル事情

知らぬ間に有期社員に ~同条件で移籍のはずが~

 Aさんは、ゴルフ会社(B社)の整備部門で、長年、パートタイマーとして勤務していました。しかし、B社が整備業務を別会社(C社)に委託することになったため、再就職先を探すことになりました。

 新しい仕事にチャレンジしたい気持ちもあったのですが、これまでの経緯もあり、C社の面接を受けてみました。人事部長から「勤務先は変わるが、これまでと労働条件は同じ」と説明があったので、その場で入社の意向を告げました。

 ところが、入社1週間前に郵送されてきた労働条件通知書をみたところ、「3カ月の有期雇用契約」と記載されています。C社に電話し、話が違うと確認を求めたところ、「それでは、この件はなかったことに」と一方的に告げられ、会話は打ち切りとなりました。

 入社日直前に「はしごを外された」形のAさんは、紛争調整委員会によるあっせんを申請しました。

従業員の言い分

 面接時には、有期契約であるという説明は一切ありませんでした。トラブルはC社側の説明不足が原因なのに、内定取消という決定には納得がいきません。

 「従来と同じ労働条件」ということばを信じていたため、内定後は就職活動もストップしていました。当面の生活費として、給料2カ月分の補償を求めます。


事業主の言い分

 当社では、労働条件通知書は入社日に手渡しが原則ですが、郵送したのは早めに本人の手元に届くように配慮したまでです。対面で話すのを避けるといった意図はありませんでした。

 有期契約という点については、面接時に口頭で伝えていたはずです。B社から移籍した他のパートタイマーについても、すべて条件は同じです。


指導・助言の内容

 面接時の応答について労使双方の主張に食い違いがありますが、いずれにせよ、内定を取り消す合理的な理由があったとは認められないと、会社側に説明しました。

 それを受け、会社側より「補償金を支払うことで解決したい」と申出があったので、金額等について労使間の調整を図りました。


結果

 会社が解決金15万円を支払うことで和解が成立し、合意文書作成となりました。



3.厚生労働省「令和元年・高齢者の雇用状況」

 国は「70歳までの雇用・就業機会の確保」等を目標として、高年法の改正等を目指しています。高年齢者等職業安定対策基本方針では、「平成32年度(令和2年度)までに65~69歳までの就業率40%」を目標として掲げています。

 受け入れる企業側の体制はどうなっているのでしょうか。厚労省の調査によると、「66歳以上働ける制度」のある企業は、全体の30.8%です。そのうち、「希望者全員」は11.7%という状況です。

 高齢者雇用という面では、大企業(25.3%)に比べ、中小企業(31.4%)の積極性が目立ちます。


 自己申告方式が適用されている労働者は、客観的方法の対象者と比べると、「会社の時間管理がルーズだ」と感じる傾向が強いようです。残業手当未申告があるかという問いに対し、前者(自己申告)の労働者は、3割強が「イエス」と回答しています。



4.身近な労働法の解説 ~割増賃金の基礎となる賃金~

 使用者は、労働者に時間外労働、休日労働、深夜労働を行わせた場合には、法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払わなければなりません。 今回は、割増の基礎となる賃金について解説します。

1.割増賃金の基礎となる賃金

 所定労働時間の労働に対して支払われる「1時間あたりの賃金額」です。 時間で定める賃金以外の賃金について、1時間あたりの賃金額は、次のように算出します。


 時間給制の従業員に、日額や月額の手当等が発生したときには、上記計算分を加味します。


2.上記「割増賃金の基礎となる賃金」から除外できるもの

 以下の①から⑦の賃金は、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されていることなどにより、基礎となる賃金から除外することができます。


 上記は例示ではなく、限定的に列挙されていますので、①から⑦に該当しない賃金は全て算入しなければなりません。

 また、年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計してあらかじめ年俸額が確定している場合の賞与部分は、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなければなりません。

 給与計算にあたっては、未払い賃金とならないよう、勤怠集計の方法と給与ソフトの計算式設定に留意しましょう。



5.実務に役立つQ&A

退職後に事業主証明? ~傷病手当金の支給申請~

 業務外の事由で負傷後、年休を消化して退職したパートがいます。後日、本人から傷病手当金の事業主証明を求められました。そもそも傷手金は受給できるのでしょうか。やはり、証明は必要でしょうか。


 被保険者資格を喪失したときに実際に傷病手当金の支給を受けていない場合でも、被保険者期間が継続して1年以上あり、傷病手当金の受給の条件を満たしていれば、被保険者期間中と同様に支給を受けることができます。

 ①療養中であること、②仕事に就けないこと(労務不能)、③4日以上仕事を休むこと、④報酬の支払いがないことの条件を満たす必要があります。

 傷病手当金支給申請書に、事業主の証明と医師の意見書を付けて保険者に提出します(健保則84条)。事業主は、仕事に就けなかった期間、報酬の支払いなどについて証明する必要があり、出勤簿や賃金台帳のコピーを添付します。

 在職中の期間を含む場合、その期間について事業主の証明が必要です。しかし、資格喪失日以降は、事業主証明欄は空欄で提出することになります(協会けんぽ)。


6.助成金情報 特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)

 65歳以上の離職者を、ハローワーク等の紹介により、1年以上継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対しての助成金です。

 なお、高年齢者でも60歳以上65歳未満の労働者を雇い入れる場合は、同じ特定求職者雇用開発助成金の中で「特定就職困難者コース」の対象となります。


1.対象となる労働者

 次のいずれにも該当する求職者
(1)雇入れ日現在において満65歳以上の者
(2)紹介を受けた日に、雇用保険被保険者でない者(失業等の状態にある者)


2.雇入れの条件

(1)ハローワーク等(ハローワーク、地方運輸局、適正な運用を期することのできる特定地方公共団体、有料・無料職業紹介事業者または無料船員職業紹介事業者)の紹介により雇い入れること
(2)雇用保険の高年齢被保険者として雇い入れ、1年以上雇用することが雇入れ時点で確実であると認められること


3.支給額

 対象労働者の雇入れの日から1年間を助成対象とし、6カ月を1期として、2期に分けて支給されます。


 ただし、支給対象期ごとに対象労働者に対して支払った賃金額を上限とします。 所定労働時間より著しく実労働時間が短い場合や、実際の賃金額が一定の基準を下回る場合は、減額や不支給となる場合があります。

 ※平成30年10月1日からは、支給対象期の途中で対象労働者が離職した場合は、その期の助成金は支給されません。(第1期の開始が平成30年10月1日以降の者)


4.事業主の条件

 各雇用関係助成金に共通の要件の他に、以下にあてはまると支給対象とならないので注意が必要です。
・対象労働者を雇い入れる前日より6カ月前から1年間に、その事業所で雇用保険被保険者を事業主都合により解雇したことがある。
・支給申請日の前日から過去3年間に、対象労働者の雇入れの日より前にこの助成金の対象となった別な労働者を、その支給対象期間中に事業主都合により解雇したことがある。
など


5.支給までの流れ

 ※支給対象期の起算日は、賃金締切日がある場合は、雇入れ後最初の賃金締切日の翌日となります。




7.今月の実務チェックポイント  ~留学生とアルバイトについて~

1.労働保険の年度更新とは

 最近、大学等で外国人留学生に、卒業後の就職やビザ手続きに関してお話をさせて頂く機会が増えてきました。そこで気になるのが、「留学」の在留資格でアルバイトをするために資格外活動を申請した際の「週28時間以内」というルールです。

 留学生達から本音の話を聞くと、週28時間のアルバイトではとても生活できず、ほとんどの人がそれ以上の仕事を掛け持ちしているのが現状のようです。確かに、時給1200円だとしても、28時間×4週×1200円=13.5万円です。家賃、光熱費、食費などをすべて含めて1日に使える金額は4500円となり、ルームシェア、まかない付きのバイトなど、相当工夫しないと生活は厳しいはずです。しかも、これに加えて定期的に学費の支払いが待っており、これが払えないと当然に退学となり帰国を余儀なくされます。ベトナムやアジア諸国から日本に留学する人のほとんどはお金もちではなく、学費を払うだけでも精いっぱいのはずです。確かにこれでは週28時間ルールが守られずに、不法就労、退去強制の流れが出来上がるのも納得できます。

 ちなみに、外国人が留学生の身分で働ける国は意外と少なく、ほかにはオーストラリアやニュージーランドなどがありますが、いずれも週20時間以内となっており、日本の待遇が決して悪い訳ではありません。

 多くの外国人留学生を日本に招致するのも重要ですが、入国前の条件をより厳しく見直すか、奨学金などの制度を充実させるなどの措置が必要です。受け入れ人数だけを目標とした安易な受け入れは結果的に不幸な人を増やし、日本の信頼を落としていきます。また、受け入れるのなら就職まで安心して勉強に専念できる枠組みを作り、卒業後には日本企業に就職してもらい、日本社会の活力を担ってもらえるようにしなければなりません。

 「偽装留学生」という報道がなされていますが、その前に受け入れる日本社会がすべきことが多くあるようです。

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