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メールマガジン2020年11月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2020年11月 Vol.142

1.人事・総務ニュース

法定労働組合と認めず ~会費無料・役員選挙も不適切~

 合同労組(職場に労組がなくても、1人で加入できる外部組織)が団交拒否に対する救済を求めた事案で、東京都労働委員会は、同組織は労組法上の労働組合に適合しないと判断しました。

 

 エステサロンを退職した従業員が、首都圏を中心とする合同労組に「駆込み」加入し、同労組が会社に対しセクハラ事件に関する団交を申し入れていました。

 

 東京都労働委員会の審査によれば、同労組の規約上、役員は一部の組合員のみの選挙で選出するとされています。さらに、「組合費無料」「組合運営への参加不要」などをうたい文句として、加入者を増やしていた実態も明らかになりました。

 

 労働組合が労組法で定める救済を求める条件として、自主性(労組法2条)、民主性(同5条2項)が挙げられています。都労委では、同労組はこの2要件のいずれも満たさないとして、申立てを却下したものです。


うつ病予防チーム発足 ~在宅勤務のストレス軽減~
 

 日清食品ホールディングス㈱は、テレワークによるうつ病の予防チームを発足させました。コロナ過で労働環境が変化するなか、自覚の有無に関係なく、ストレスを抱える従業員を把握し、改善施策を実施するとしています。

 

 同社では「テレワークうつ」の発症例はなく、社内アンケートでも8割が肯定的な回答をしています。一方で、「プライベートとの境目があいまい」「コミュニケーションがとりづらい」等の声も上がっていたため、「先手の予防アプローチ」を講じたものです。

 

 第1弾として、在宅勤務の国内従業員1300人を対象に、疲労ストレス計を用いた計測を行いました。注意が必要と認められた従業員に対しては、睡眠の質向上プログラムへの参加やオンライン面談等を促します。

 
10年ぶりに前年割れ ~令和3年3月の高卒求人~

 新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う景気停滞により、令和3年3月の新卒者の就職活動は、大きな影響を受けています。

 

 厚生労働省は、令和2年7月末現在で、ハローワークにより受け付けた高校・中学卒業者の求人・求職状況をとりまとめました。

 

 高卒の集計データをみると、企業等による求人数は33万5757人で、前年同期に比べ、10万7589人少なくなっています。率換算で、24.3ポイントの大幅減です。

 産業別では、「宿泊業、飲食サービス業」(49.6ポイント減)の落ち込みが目立ちます。その他、「製造業」で28.8ポイント減、建設業で4.4ポイント減といった状況です。

 生徒からの求職者数も、率換算で8.0ポイント低下しました。結果として、求人数を求職数で除した求人倍率は2.08倍で、前年比0.44ポイントのダウンです。求人倍率が前年を割り込むのは10年ぶりのことです。


 
新型コロナで内定取消急増 ~悪質事案の企業名も公表 厚生労働省~

 厚生労働省の発表によると、今年4月に就職予定だった大学生・高校生等のうち、内定を取り消された人の数は、令和2年8月末時点で174人(76事業所)となっています。新型コロナの影響で、前年度・同時期(35人)の5倍に急増しました。

 内定取消には至らないまでも、入社時期繰下げの対象となった学生・生徒数は1,210人(87事業所)の多数に上っています(前年度はゼロ人)。


 併せて、大学生28人の内定を取り消したとして、神奈川県横浜市の生活関連サービス業者(旅行業)が企業名公表の対象となっています。


 職安則では、告示で定める基準(取消者10人以上など)に合致する場合、学生の適切な職業選択に役立てるため、企業名を公表できる旨の根拠規定を置いています(17条の4)。



2.職場でありがちなトラブル事情

悪質な流言でやむなく退職 ~医院もセクハラ対応怠る~

 医院に勤務する看護師Aさん(女性)は、周囲でおかしなうわさが流されているのに気が付きました。Aさんの「私生活の乱れ」に関する誹謗中傷です。

 

 うわさの発生源は、どうやら同僚の看護師Bさん(男性)のようです。

 

 セクハラ指針では、「同僚が、性的な内容の情報を意図的・継続的に流布」することで、仕事に支障が生じるケースもセクハラの1類型として挙げています。

 

 そこで、医院側に対して、セクハラ防止に関する対策改善を申し入れましたが、「なしのつぶて」という状況でした。

 

 職場にいたたまれない状況となったAさんは退職を余儀なくされましたが、医院側のセクハラ対策の不備を理由として、都道府県労働局にあっせんの申請を行いました。

従業員の言い分

 もちろん、根も葉もないうわさを流布した同僚個人に対する憤りはありますが、組織としてセクハラ対応をおざなりにした医院側の責任も小さくありません。

 

 退職した今でも、他の同僚は「うわさを真実」と信じているに違いありません。医院側が適切な対応を採らなかったことによる精神的・経済的損害に対する補償として、150万円の支払を求めます。


事業主の言い分

 当方の調査によると、Aさんが「異性の同僚と未明まで酒席を共にした」のが、諸々のうわさを生じる発端になっているようです。

 

 事後の対応として、うわさを流した当人に対する注意も行っており、「放置」という批判は当たらないと思います。金銭補償の要求には、応じることはできません。


あっせんの内容

 話し合いの前提となる事実の確認段階で、労使双方の主張の隔たりが埋まらないことから、いったん、あっせんの打切りを示唆しました。

 

 しかし、両者ともに紛争調整委員会の場での解決を望むという意思表示だったため、医院側からの謝罪および金銭支払いという方向で、解決案を提示しました。


結果

 「合意文書をもって、医院側からの謝罪表明とする」「解決金として、金150万円を支払う」等の内容で、双方があっせん案を受諾しました。



3.厚生労働省「令和元年度・長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」

 厚労省では、毎年、「長時間労働が疑われる事業場(長時間労働に関する情報を把握している事業場、過労死等に関する労災請求が行われた事業場)」を対象として、違法残業や賃金不払に関する調査を実施しています。

 

 令和元年度は、改正労基法による「時間外上限規制の強化」の施行1年目(中小企業は猶予措置)でしたが、違法残業の動向に変化がみられたのでしょうか。

  

 違法な時間外が指摘された事業場割合は、前年度の40.4%から47.3%に増加しました。しかし、その内訳をみると、時間外「80時間超」の事業場割合が66.8%から37.1%に低下するなど、「過労死レベルの長時間労働」については抑制傾向が認められるようです。



 ちょっと気になるのは、この「長時間労働の実態」を職場でどのように把握しているかです。

 29.2%(9,859)の事業場は自己申告制を採っていますが、「機器による記録等の客観的な方法」による事業場(タイムカード、IC・IDカード、PC記録の合計)が62.3%(20,967)を占めています。




4.身近な労働法の解説 ~法令等の周知義務~

 使用者は、適正な労務管理と紛争の防止のため、法令の要旨、就業規則、労使協定等を掲示、備付け、書面の交付等によって周知させなければなりません(罰則あり)。今回は法令等の周知義務について解説します。

1.法令等の周知義務

 使用者は、この法律およびこれに基づく命令の要旨、就業規則、労使協定ならびに労使委員会決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければなりません(労基法106条1項)。



2.周知事項

以下の要旨(容易に理解ができるよう抜き出して整理したもの)または全文を周知します。


① 労基法および同法に基づく命令(労基法施行規則、年少者労働基準規則等)(要旨)


② 就業規則(全文)


③ 以下の労使協定(協定原本や写しでなくてもよいが協定の内容を網羅的に周知するべきもの)
a.貯蓄金管理に関する協定(18条2項)
b.賃金控除に関する協定(24条1項ただし書き)
c.1力月単位の変形労働時間制に関する協定(32条の2第1項)
d.フレックスタイム制に関する協定(32条の3第1項)
e.1年単位の変形労働時間制に関する協定(32条の4第1項)
f.1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定(32条の5第1項)
g.一斉休憩の適用除外に関する協定(34条2項ただし書き)
h.時間外労働・休日労働に関する協定(36条1項)
i.代替休暇付与に関する労使協定(37条3項)
j.事業場外労働に関する協定(38条の2第2項)
k.専門業務型裁量労働に関する協定(38条の3第1項)
l.時間単位年休に関する労使協定(39条4項)
m.年休の計画的付与に関する協定(39条6項)
n.年休取得日の賃金を健康保険の標準報酬月額の30分の1相当で支払う制度に関する協定 (39条9項ただし書)


④ 企画業務型裁量労働制にかかる労使委員会の決議内容(38条の4第1項)
労使委員会の上記③c~nの協定に代わる決議の内容(38条の4第5項)


⑤ 高度プロフェッショナル制度に関する労使委員会の決議内容(41条の2第1項)


3.周知方法

 使用者は、次のいずれかの方法で周知させなければなりません(労基法施行規則52条の2)

① 常時各作業場※の見やすい場所に掲示、または備え付ける
② 書面で交付する(印刷物および複写した書面も含まれます)
③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する(容易に当該記録を確認できるようにする)

 ※作業場とは、事業場内において作業の行われている個々の現場をいい、主として建物別等によって判別されます(昭23・4・5基発第535号)。



5.実務に役立つQ&A

20歳前障害に該当か ~会社員が被災したら~

  当社に勤務する18歳の者が業務外の理由で負傷したとき、障害厚生年金を受給できる可能性はありますが、障害基礎年金はどのような扱いになるのでしょうか。国民年金は20歳から加入だと思いますが…。


 20歳前のケガというと、国民年金関係ですぐに思い浮かぶのは「20歳前傷病による障害基礎年金」です(国年法30条の4)。


 傷病の初診日において20歳未満で、国民年金に未加入の人は、20歳あるいは20歳以後の障害認定日に障害の状態にあるときに障害基礎年金を支給するとしています。


 しかし、20歳前に会社員となり、初診日に厚生年金の被保険者である場合は、同時に国民年金の第2号被保険者です。


 国民年金の被保険者期間中に初診日がある障害については、20歳前であっても、国年法30条に基づき本来の障害基礎年金が支給されることになります。当然、障害厚生年金の対象にもなります。


 20歳前傷病による障害基礎年金には前年の所得により2段階の支給停止措置が設けられていますが(国年則31条2項12号ロ)、本来の障害基礎年金の方に制限はありません。


6.助成金情報 ~特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)~

 いわゆる就職氷河期に就職の機会を逃したこと等により十分なキャリア形成ができていなかったために、正規雇用労働者としての就業ができていない人の、安定雇用を支援するための助成金です。これらの人を、ハローワークや民間の職業紹介事業者など(以下「ハローワークなど」)の紹介により正規雇用労働者として雇い入れた事業主に対して支給されます。


1.対象となる労働者

1 雇入れ日時点で満年齢が35歳以上55歳未満
2 雇入れ日の前日から起算して過去5年間に正規雇用労働者(※)として雇用された期間が、通算して1年以下であり、雇入れ日前日から起算して過去1年間に正規雇用労働者として雇用されたことがない
3 ハローワークなどの紹介時点で失業しているまたは非正規雇用労働者である方でかつ、ハローワークなどにおいて、個別支援等の就労に向けた支援を受けている
4 正規雇用労働者として雇用されることを希望している


※正規雇用労働者とは
① 期間の定めのない労働契約である
② 所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(週30時間以上)と同じである
③ 賃金、賞与、退職金、休日や昇給などの労働条件について、同一の事業主に雇用される通常の労働者に適用される就業規則のうち、長期雇用を前提としたものが適用されること


2.対象となる事業主の要件

1 雇用保険の適用事業主である
2 対象労働者を、ハローワークなどの紹介によって、正規雇用労働者としてかつ雇用保険の一般被保険者(週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者を除く)として雇用することが確実と認められる。
3 対象労働者の雇入れ日の前日から起算して6カ月前の日から起算して1年を経過する日まで(以下基準期間という)に、事業主の都合による従業員の解雇(勧奨退職も含む)をしていないこと
4 基準期間に、倒産や解雇など特定受給資格者となる離職理由で離職した被保険者数が、対象労働者の雇入れ日における被保険者数の6%を超えていないこと(特定受給資格者となる離職者が3人以下の場合を除く)
5 対象労働者の出勤状況や賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備保管していること

※既に自社で内定している人を紹介された場合や、自社で過去3年間に職場適応訓練を受けた人を雇い入れる場合など、不支給となる要件があります。


3.支給申請

 雇入れに係る日(原則は雇入れ日直後の賃金締切日の翌日)から起算した1年間を6カ月ごとに区分し、各期が経過するごとに申請します。

4.助成額

※制度の詳細は厚生労働省HP「特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用コース)のご案内」等をご参照ください。



7.今月のコラム  ~新型コロナウイルスによる入国禁止措置について~

 現在、新型コロナウイルスの影響により多くの国を対象に日本への入国禁止措置が取られています。しかし10月前後からは一部の国に限って例外的に入国が認められる扱いが開始しましたので、以下に現状を簡単にまとめておきます。


 原則:入国前14日以内に159の国・地域に滞在歴のある人は上陸を拒否


 この場合には当然に就労も可能になると考えられ、申請数が多いネパール、スリランカ、カンボジアなどの人々が日本社会の労働力として組み込まれていくことが予想されます。


 ヨーロッパでは難民として受け入れされたアフリカ系や中近東系の外国人が、トラック運転手やスーパーの店員など多くの職種で活躍しています。


 例外:1)2020年8月31日までに再入国許可をとって出国した人 2)日本人か永住者の配偶者と子 3)定住者の配偶者又は子で,家族が離れ離れの人 4)「教育」又は「教授」で学校教育に支障が出る場合    5)「医療」の在留資格を持つ人 6)「国際的な人の往来再開に向けた段階的措置」 7)その他、人道的な理由がある人


 上記は家族関係や医療従事者などが主な対象となっていますが、中でもビジネス目的で2020年9月から設けられたのが6)「国際的な人の往来再開に向けた段階的措置」です。ニュースなどでよく報道されている内容で、その概要としては以下の通りです。


分類 対象者 対象国 待機期間 活動内容
1.中長期滞在者 駐在員など ベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランド、カンボジア、シンガポール、韓国、中国、香港、マカオ、ブルネイ、マレーシア、ミャンマー、モンゴル、ラオス、台湾 14日間 ・新型コロナの検査
・公共交通機関の使用不可
2.短期滞在者 1か月以内 シンガポール、韓国、ベトナム なし ・新型コロナの検査
・公共交通機関の使用不可
・移動の制限
超短期滞在者 72時間以内 ビジネス目的の入国実績が多い国 なし ・新型コロナの検査
・公共交通機関の使用不可
・移動の制限

 当初は完全な14日の待期期間が義務付けられていましたが、一部では宿泊施設と勤務先の行き来が可能になるなど、限定的な解除の動きがみられます。今後、この動きは広がっていくものとみられ、ACROSEEDとしても日本企業のお役に立つサービスを模索しています。

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