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メールマガジン2021年03月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2021年03月 Vol.146

1.人事・総務ニュース

賃上げ率は2%を割り込むと予想 ~コロナショックが影響~
 

 日本の実質GDPは2020年度通期でマイナス成長となる見込みで、景況感は若干改善しているものの、景気回復には時間を要する状況です。労働側は昨年同様の賃上げ目標を掲げていますが、賃金コンサルタントの予想では賃上げ率は2%を割り込みそうです。

 

 プライムコンサルタントの菊谷寛之代表は、「景気低迷で消費者物価は8月以降マイナス基調で推移し、有効求人倍率も1.04倍まで低下した。昨年退陣した安倍政権はデフレ脱却を呼びかけた結果、2014年から7年間、2%台の賃上げ率が続いてきたが、新政権の動きは鈍い。2022年のベアは400円前後で、定昇分もやや圧縮される可能性を考えると、賃上げ率は1.8%前後」と観測します。

 

 賃金システム研究所の赤津雅彦代表は、「直近の昨年末賞与は、飲食・生活関連サービス業界で支給停止等も行われた。最低賃金の上昇が一服したことも、賃上げにはマイナスに働く。日本全体で、本気になって知恵を出し合い、『労働価値創造型』賃金等への移行を断行しない限り、賃上げ率が1.7%に届かない可能性もある」と厳しい見方を示しました。


在宅手当の課税取扱い示す ~通信費・電気料金でFAQ~
 

 働き方改革と新型コロナウイルスが相乗効果となり、テレワークの導入企業が増加しています。国税庁は、そうした状況を踏まえ、「在宅勤務に係る費用負担などに関するFAQ(源泉所得税関係)」を明らかにしました。

 

 基本的な考え方として、在宅勤務の通常経費について、精算方式により実費相当額を支給する場合、従業員に対する給与として課税する必要はありません。

 

 一方、毎月5000円を「渡切り」で支給するなど、不使用分を会社に返還する必要がないときは、課税所得として取り扱われます。

 

 通信費・電気料金の精算方式に関してですが、通信費は通話明細書により在宅勤務に要した部分を計算します。業務のために頻繁に通信を行う場合、一定の算式によることも可能です。


 電気料金については、使用した部屋の床面積や在宅勤務日数に基づく計算方法を例示しています。


「賞与期待権」の侵害認めず ~通知書との差額めぐる訴訟で~

 採用通知書に記載された「想定年収」と実支払額の差額を求める裁判で、東京地方裁判所は、労働者サイドの請求を全面的に棄却しました。

 

 労働者が技術開発センターのアシスタントマネジャーとして採用された際、通知書によれば、月額賃金・固定残業代・賞与の合計で、年収1036万円余を受けるはずでした。

 

 しかし、会社と労組の交渉の結果、支払われた賞与額が予想より少なかったため、実際の年収額が採用時の予想を141万円下回る結果となりました。労働者は「業績と出勤率以外の減額事由は定められていない」として、差額支払いを求める裁判を起こしたものです。


 これに対し、裁判所は「採用通知書や賃金規定には労組との交渉を経て金額を決定すると明記」されていて、採用通知書記載の年収は「想定の域を出るものではない」と指摘しました。そのうえで、「具体的な賞与額に対する期待を認めることは困難」と判示しました。



2.職場でありがちなトラブル事情

製造ミス一回で懲戒解雇 ~それ以前から「いじめ」続く~

 メーカーの製造ラインで期間契約社員として働いていたAさんは、室長のいじめ・嫌がらせを受け、うつ病状態で仕事を続けていました。

 

 体調がすぐれない中、作業中の不注意で製品を破損させてしまいましたが、会社は最初に始末書の提出を求め、その後、懲戒解雇を申し渡しました。

 

 処分の厳しさに驚いたAさんは、都道府県労働局長のあっせん申請を行いました。すると、会社は一転して「懲戒解雇を普通解雇に改める」と言い出しました。

 

 あっせんの場では、Aさんが会社への不信から復職の意思がない旨表明したため、補償金の額が焦点となりました。

 
従業員の言い分

 商品を破損したことは申し訳ないですが、他の同僚がミスした際は口頭注意で済んでいます。室長のいじめは入社後3年目くらいから始まっていて、今度の事件は「私を会社から追い出す」口実に過ぎません。

 

 現在もうつ病で通院を続け、薬を手放せない状況です。就職活動もままならないため、生活保障も含めて130万円の補償金支払いを求めます。


事業主の言い分

 Aさんは入社当初から勤務態度に問題があり、会社として厳しい指導を行いましたが、うつ病を発症するほどの行き過ぎがあったとは思えません。

 

 懲戒処分としたことにより失業給付の給付制限期間が長くなった点は、会社の落ち度として認めます。しかし、既に解雇予告手当(20万円)は支払っており、これ以上の金銭的要求は呑めないところです。


あっせんの内容

 会社側に対し、本人更生のために十分な努力も尽くさないまま、いきなり懲戒解雇処分に付すのは、他の労働者とのバランスも欠き、不当である点を指摘しました。
 そのうえで、Aさんがうつ病で就職活動が十分にできない状況を考慮し、解雇予告手当に加え、解決金の積み増しを考慮するよう求めました。


結果

 会社が解決金70万円を支払い、Aさんが職務上知り得た秘密を口外しないという条件で、合意文書の作成が行われました。



3.厚労省「令和2年・障害者雇用状況集計結果」

 令和3年3月から、障害者の法定雇用率が2.3%に引き上げられます。引上げ直前の令和2年(6月1日現在、法定雇用率2.2%)の時点では、障害者の実雇用率2.15%で、達成企業割合48.6%でした。

 

 平成元年までさかのぼると、障害者の実雇用率1.32%、達成企業割合51.6%という状況でした。ちなみに、その当時の法定雇用率は1.6%でした。


 この30年余で実雇用率は0.83ポイント上昇しました。しかし、並行して法定雇用率の引上げが実施されるので、「逃げ水」のような状況に変わりはありません。

  

 企業規模別の実雇用率をみると、大企業(1,000人以上)が2.36%だったのに対して、小企業(45.5~100人未満)は1.74%でした。この分野では、さすがに経営体力のある大企業の方が十分な施策を行っているようです。


 なお、45.5人とは法定雇用率2.2%で「1人以上の障害者雇用義務を負う」企業規模です。2.3%に引き上げられると、最低ラインは43.5人に下がります。





4.身近な労働法の解説 ~労使協定~

 今回は、労基法に定める労使協定(以下単に「労使協定」)について解説します。

1.労使協定とは

 労働者集団の代表と使用者が結ぶ労働条件や労働者の待遇についての特別な合意です。 労使協定の締結当事者は、当該事業場の使用者と次の①と②のいずれかです。

① 労働者の過半数で組織する労働組合があるときは、その労働組合
② 上記①の労働組合がないときは、労働者の過半数を代表する者


 労使協定は 当該事業場の全労働者に適用されることが予定されています(労使協定の中で適用範囲を限定するものもあります)。


 労使協定のほかにも、労働条件の合意書面という点では、集団的労使関係においては労働組合と締結する「労働協約」(協定書・確認書・覚書等)、個別的労使関係においては「労働契約」があります。前者は組合員に対して適用され、後者は労働者個人に対して適用されます。



2.労使協定の効力

 「その協定に定めるところによって労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要なものであること。」とされています(昭63・1・1基発1号)。


 労使は、労基法上の最低労働条件よりも有利な合意を行うことしかできませんが、労使協定を締結することで労基法の例外規定が適用され、労基法に違反しないという効力(免罰効果)が生じます。


 労使協定は、それだけでは労働契約上の権利義務は生じませんので、労働協約、就業規則等が必要です。また、締結により効力が生じるものと、締結+届出により効力が生じるものがあります。



3.労基法に定めのある主な労使協定 ※【 】内は効力発生要件

・24(賃金控除)協定【締結】
・一斉休憩の原則の適用除外【締結】
・36(時間外・休日労働)協定【締結+届出】


 など、労基法には賃金や労働時間・休憩・休日・休暇に関する労使協定が多く規定されています。また、一部の労使協定(変形労働時間制、年休の計画的付与等)においては、労使協定に代えて、労働時間等設定改善委員会の委員の5分の4以上の多数による議決とすることもできます(企画業務型裁量労働制、高度プロフェッショナル制の労使委員会による特例もあります)。


 その他、労基法以外にも、育児介護休業法等で定める労使協定があります。



4.免罰効果の例(36協定の場合)

 労基法では、1日8時間、週40時間を超えて労働させることができず(32条)、また、週1回または4週4回の休日を与えなければならない(35条)とされています。


 この原則を修正する例外規定として、労使協定を締結し所轄労働基準監督署長へ届け出ることにより、労働時間を延長し、または休日に労働させることができるようになります(36条)。


 労働時間・休日の規定違反は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金(119条)ですが、有効な労使協定の下で時間外・休日労働を行わせた場合、使用者は責任追及を受けません。


 ※なお、法定労働時間を超える労働や法定休日労働については、就業規則の規定や労働契約での合意がある場合に労働の義務が発生しますので、36協定があれば当然に時間外・休日労働をさせることができるという訳ではありません。


 ※令和3年4月1日より、36協定届の様式が変更され、事業主等の押印および署名が不要になります。



5.実務に役立つQ&A

60歳から国民年金? ~再雇用で資格を喪失~

  再雇用者で、勤務時間が大幅に短縮する者は、厚生年金の資格を喪失させます。被保険者期間が10年未満なら、60歳以上も国民年金に加入できるのでしょうか。また、負担軽減策はありますか。


 老齢基礎年金は、原則として、10年の資格期間(保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間)を満たした人に、65歳以後支給されます。


 国民年金は、原則20歳以上60歳未満の者が加入しますが、60歳以上65歳未満の者も、任意加入することができます(国民年金法附則5条)。すでに受給資格要件を満たしていても、被保険者期間が480月未満なら、年金を増やすために加入できます(前条6項)。


 令和3年度の国民年金保険料は、月額1万6610円で前年比70円増となりました。年間では約20万円になります。


 被保険者は、将来の保険料を前納することができます(国年法93条)。期間は半年、1年、2年の3パターンから選択可能で、現金払いか口座振替などで割引率が異なります。最も得なのは、「2年間の口座振替」で、1万5850円の割引です。



6.助成金情報 ~中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)~

 中途採用について雇用管理制度を整備しつつ拡大し、生産性の向上に取り組む事業主に対する支援を目的とした助成金です。予め中途採用計画を作成し労働局へ提出したうえで取り組むことが必要です。


助成金の概要

 以下の実施区分ごとに、1事業所あたりそれぞれの金額が助成されます。


Ⅰ 中途採用の拡大に対する助成 以下のA)かB)いずれかの措置


A)「中途採用率の向上」…中途採用率(60%未満)が一定以上向上(最低2人以上採用)
20ポイント以上向上…50万円  40ポイント以上向上…70万円
※過去に中途採用を実施したことがない場合…上記に加えて10万円

B)「45歳以上の人の初採用」…1年以内に最低1人以上採用
支給申請日時点で雇入れから6カ月経過している人が1人以上いる…60万円
上記の中に雇入れ時に60歳以上だった人がいる場合…70万円
 なお、現在、改正(中途採用情報の公開を行った事業主に対する補助の追加)が検討されています。


Ⅱ 一定期間経過後の生産性向上


 計画期間初日が属する会計年度の前年度と3年度後を比較して生産性が6%以上向上
A)「中途採用率の向上」の場合…25万円
B)「45歳以上の人の初採用」の場合…30万円


2.支給対象となる中途採用とは

・新規学卒者(新規学卒と同一の枠組み)で採用された方以外の採用
・雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者としての採用
・期間の定めのない労働者(パートタイムは除く)としての採用
・採用の日以前1年間に申請事業主の事業所において雇用、出向、派遣、請負で就労した人でない
                                         など


【申請の流れ】



【事業主】

・雇用保険適用事業主
・中途採用計画提出の前日以前6カ月間に事業主都合による解雇等をしていない
・上記期間内に失業給付の手続きをした離職者のうち、特定受給資格者であり事業主都合等一定の離職理由の者が雇用保険被保険者数の6%を超えていない
・過去3年間の中途採用率が60%未満である
・中途採用計画期間初日の前日から起算して3年前の日に雇用保険適用事業主であること
など

※詳細は厚生労働省HP等をご参照ください。



7.今月のコラム  ~難民申請者に関する入管法の改正案~

 2月18日、立憲民主党などから難民等保護法案・入管法改正案が参院に提出されました。現在の入管法による運用では難民申請者に対する認定率が極端に低く、アメリカでは29%、ドイツでは26%近くであるのに対して日本は0.4%となっています。また、難民申請者に対する長期収容なども人権問題として捉えられており、収容者の一部がハンガーストライキを行い死亡する事件も発生しています。


 このような問題点に対応するための改正案で、全件収容主義の撤廃や退去強制該当者に対して法務大臣が人道的な事情を考慮して日本での滞在を例外的に許可する“在留特別許可”の改正などが盛り込まれています。


 確かに、迫害される恐れがある難民はすぐにでも保護しなければなりません。しかし、現状の難民申請制度が多くの外国人に悪用されていることも事実です。これは難民申請を行えば日本に滞在することが可能となり、条件によっては生活費を稼ぐための就労も認められるからです。中には資格外活動違反で退去強制処分なった外国人留学生による難民申請、ビジネスの実態がないという事で「経営・管理」の更新が不許可なった日本滞在8年目になる外国人経営者による難民申請も目にしたことがあります。また、退去強制を拒否する外国人の中には、数年前の不法入国後に子供が生まれ生活基盤が日本にあるとの理由で帰国を拒否する例も多くみられます。


 いずれのケースも難民であるかどうかの真偽はわかりませんが、問題は本当に支援すべき難民なのか、自分勝手な都合で制度を悪用しているだけかの判別が困難である点です。


 とはいえ、どんな方法を用いてもすべてのケースで真偽を正確に判別することは不可能です。「疑わしい申請があった場合にどう判断するか?」、現状ではルール通りにすべて不認定としていますが、今後はその範囲を広げて「疑わしきは罰せず」に移行していくのではないかと思います。もちろん、認定後も一定期間はトラブルを起こさないか生活状況の確認なども必要ですし、犯罪等があった場合にはすぐに認定を取り消すことができるような仕組みも必要です。


 当然、中には制度を悪用して日本に滞在する権利を得る人間も出てきますが、日本がグローバルな先進国として発展していくためには、ある程度の寛容さがあってもいいのではないかと思います。多少の入国前の状況には目をつぶり、それよりも国内での就労実績や納税義務の履行などの入国後の本人の努力に焦点をあて、誰にでも平等にチャンスが与えられる社会を築くことが重要だと思います。社会福祉の増加など課題はたくさんありますが、多様な外国人を受入れることで少子高齢化に悩む日本社会の一役を担ってもらう仕組みづくりが求められていると強く感じています。


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