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メールマガジン2021年05月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2021年05月 Vol.148

1.人事・総務ニュース

「賃上げの流れ」は維持 ~2021春季労使交渉~
 

 春季労使交渉の集中回答日となった3月17日、先行する大手企業では、回答を得た51組合がすべて賃金構造維持分を確保しました。


 金属労協の高倉明議長は、「8年連続となった賃上げの流れを継続できた」と総括しました。中小製造業の組合が多くを占めるJAMでも、「大手追従から脱却の流れ」を評価しています。

 

 4月5日時点で連合がまとめた集計結果(2136組合)では、平均賃金方式での定昇相当込み賃上げ額・率は5463円・1.82%(前年比298円・0.12ポイント減)という状況です。


 300人未満の中小組合(1369組合)は4639円・1.84%(同169円減・0.09ポイント減)で、率では全体を上回る健闘ぶりです。



「偽装一人親方」を排除へ ~労働者性あり2割~
 

 国土交通省は、一人親方問題に関する中間とりまとめ案を明らかにしました。「社会保険の加入逃れ」などの不正防止のため、下請ガイドラインを改正する方針です。

 

 実態が雇用形態であることが明らかな技能者を一人親方として取り扱う企業は、下請け企業に選定しないなど規制を強化します。

 

 不適正な例として、①実務経験年数が10年以上なく、建設キャリアアップシステムのレベル3相当以上の技量のない20歳台労働者、➁特定会社に専属従事し、始・終業時刻を指定され、具体的な指揮命令を受けている個人事業主等を例示しました。

 

 防止策として、元請企業に対し、現場入場時のチェックリスト活用、ヒアリング等の実施を求めるとしています。


 JILPT(労働政策研究・研修機構)は、過去に「労働者性」が問題となった事案を分析した結果、22.1%で個人事業主に該当しないという研究結果を公表しています。


キャッシュレス決済業者へ賃金振込 ~労基則で要件明記へ~

 QRコードなどを用いたキャッシュレス決済業者(資金移動業者)の利用が、急速に拡大し、業者アカウントへの賃金支払ニーズが広がっています。令和2年に閣議決定した「成長戦略フォローアップ」では、早期の制度化を求めていました。

 

 厚労省は、昨年8月から、この問題に対する検討を進めていましたが、労基則の改正により、要件を満たす業者に限定して賃金支払いを認める方針です。

 

 現行でも、資金決済法などに基づき、すべての業者に必要な規制がなされています。これを「1階部分」と位置づけ、さらに「2階部分」の保護策を講じます。


 労基則では、「賃金の確実な支払い」を担保するため、民間保険による保証、適時の換金性確保、不正引出しの対策等の要件を明確化します。


 保証機関は、業者破綻時には、労働者に一定額を早期に支払い、財務局に対し供託金の還付請求を行う流れを想定し、これにより、安全性を確保するとしています。



2.職場でありがちなトラブル事情

悪質な勧奨により泣く泣く退職 ~傷病手当金の説明も「無責任」~

 冠婚葬祭会社で働いていたAさんは、椎間板ヘルニアで自宅療養に入ったところ、支社長が見舞に訪れました。

 

 Aさんは年休を消化中でしたが、支社長の強い説得を受け、最終的に退職願の提出に同意しました。その際、会社からは、「健保は任意継続被保険者となり、給付関係で不利益はない」という説明を受けました。

 

 ところが、健保の手続きを採ろうとすると、雇用期間が1年に満たないため、退職後の傷病手当金を受給できないことが判明しました。

 

 「虚実取り混ぜ」、退職に追い込もうとする会社の態度に対し、不信感を募らせたAさんは、紛争調整委員会へあっせんを申請しました。

 
従業員の言い分

 病気で休む前から、支社長は私の営業成績が悪いことを理由として、執拗な嫌がらせを続けていました。退職届の提出に至るまで、支社長等から受けた言動により、口ではいい表せないほどの苦痛を味わいました。

 

 会社のいい加減な説明により、健保の給付面で不利益を被った点も含め、金銭面で相応の補償を求めます。


事業主の言い分

 Aさんは、営業成績不振でプレッシャーを感じていたことに加え、勤務に耐えられない健康状態となったことにより、自ら退職を申し出たものです。

 

 執拗な退職勧奨等を行ったという事実はなく、会社として、金銭補償するべき理由があるとは、到底、考えられません。


あっせんの内容

 退職に至った経緯(勧奨の有無)について、労使間の主張は終始、食い違いを見せ、合意点を見出せませんでした。

 会社に対して「健康保険に対する不正確な情報提供が、紛争の一因となった」点に注意を促すとともに、Aさんには「事実関係の究明に固執するのなら、裁判によるしかない」と説明し、金銭面での合意を促しました。


結果

 会社がAさんへ10万円の和解金を支払うという内容で、労使双方による合意文書の作成が行われました。



3.日本政策金融公庫「中小企業の雇用・賃金に関する調査」

 調査は、日本政策金融公庫が取引先である中小企業を対象に行ったものです(有効回答数6539社)。

 

 個々の企業が支払った「賃金総額(2020年12月現在)」をみると、「前年に比べ増加」と答えた企業は29.6%にとどまりました。前回調査比28.6ポイントの大幅減です。


 前回(2019年)調査時には、51.3%の企業が「増加する」という見通しを示していました。しかし、新型コロナの影響等で、多くの企業が予測を誤った形です。

  

 企業活動は縮小を余儀なくされましたが、人手不足はどの程度緩和されたのでしょうか。正社員が足りないと回答した企業割合は、前年比16.6ポイント減の36.6%でした。


 こちらの落ち込み幅は、思ったより大きくありません。建設業、運送業では、相変わらず半数を超える企業が人手不足に頭を痛めている状況です。






4.身近な労働法の解説 ~事業場外労働のみなし労働時間制~

 今回は、労基法に定める「事業場外労働のみなし労働時間制」について解説します。

1.事業場外労働のみなし労働時間制(労基法38条の2)とは

 労働者が業務の全部または一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなすことのできる制度です。



2.対象となる業務・対象とならない業務

 事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務です。


そのため、次のように事業場外であっても使用者の指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はできません。


① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
② 無線等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合
③ 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合


 テレワークにおいて、次の①②をいずれも満たす場合には、制度を適用することができます。


① 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
※この解釈については、以下の場合については、いずれも①を満たすと認められ、情報通信機器を労働者が所持していることのみをもって、制度が適用されないことはありません。
・勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合
・勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合
・会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、または折り返しのタイミングについて労働者において判断できる場合
② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
※使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合については②を満たすと認められます。



3.労働時間の算定方法

事業場外労働のみなし労働時間制が適用される事業場外の業務に従事した場合における労働時間の算定には、次の3つの方法があります。


① 所定労働時間
② 事業場外の業務を遂行するために、通常所定労働時間を超えて労働することが必要である場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間
③ ②の場合であって労使で協定したときは協定で定める時間


 ②③のときは、労働時間の一部について事業場外で業務に従事した日における労働時間は、別途把握した事業場内における時間とみなし労働時間制により算定される事業場外で業務に従事した時間を合計した時間です。 なお、上記合計した時間や②③の時間が法定労働時間を超える場合には、割増賃金が必要です。 また、休憩時間や休日労働・深夜業の割増賃金の規定は適用されます。



5.実務に役立つQ&A

外国人の手続き不要か ~留学生で雇用保険なし~

  外国人留学生の雇用を検討しています。昼間学生は雇用保険の被保険者ではないため、ハローワーク等への届出等は不要ということでしょうか。


 原則として、日本国に居住し、合法的に就労する外国人は、雇用保険の被保険者となります。ただし、昼間学生の場合、被保険者とならない点は外国人であっても同様です。


 しかし、新たに外国人を雇い入れた場合、労働施策総合推進法(旧雇用対策法)に基づく手続きが必要です。同法28条では、氏名や在留資格、在留期間など「外国人雇用状況」を、厚生労働大臣(ハローワーク所長に権限委任)に届け出るよう求めています。


 雇用保険の被保険者であるか否かによって届出事項に違いはあるものの、届出自体は必要です(施行規則10条3項)。


 届出は、新規に雇い入れた場合だけではなく、離職した場合も含まれています。被保険者ではない場合の提出期限は、雇入れまたは離職日の翌月の月末まで(労推則12条2項)です。



6.助成金情報 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

 外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行うことで、外国人労働者との間に生じやすい労務トラブルを防ぎ、外国人労働者の職場定着に取り組んだ事業主に対してその費用の一部が助成されます。 事前に整備計画を作成して認定を受け、計画に基づいた整備の実施後、一定期間を置いて、離職率目標を達成した場合に助成金が支給されます。


対象となる外国人労働者

・外国人雇用状況届出の対象となる方(日本国籍を有しない方、ただし特別永住者等の方は対象外)
・雇用保険被保険者であること(技能実習生、アルバイトでも雇用保険被保険者であれば対象)

主な受給要件

・外国人雇用状況届を適正に届け出ている事業主(企業単位で申請)
・就労環境整備計画(3カ月~1年)を作成し、都道府県労働局へ提出し認定を受けている
・上記計画通りに就労環境整備措置を実施している
・計画期間末日の翌日から1年を経過するまでの期間(以下「評価時離職率算定期間」という)の離職率目標(外国人労働者離職率と日本人労働者離職率)を達成している


外国人労働者離職率目標 : 10%以下
(ただし計画期間末日の翌日における外国人労働者数が2人以上10人以下の場合は、評価時離職率算定期間における外国人離職者数が1人以下であること)


日本人労働者離職率目標 : 評価時離職率が計画時離職率を上回っていないこと

就労環境整備措置

必須メニューAとBを実施し、かつ選択メニューC~Eのうちいずれかを実施する


必須メニュー
A.雇用労務責任者の選任
B.就業規則等社内規程の多言語化


選択メニュー
C.苦情・相談体制の整備
D.一時帰国のための休暇制度
E.社内マニュアル・標識類等の多言語化


※いずれも新たに導入するものであることが必要で各メニューについて詳細な要件があります。

助成金の内容

給対象経費 : 通訳費、翻訳機器導入費、翻訳料、弁護士・社会保険労務士等への委託料、 社内標識類の設置・改修費


支給額    : 生産性要件を満たした場合    支給対象経費の2/3(上限72万円)
生産性要件を満たしていない場合  支給対象経費の1/2(上限57万円)

支給申請

評価時離職率算定期間終了後、2カ月以内に支給申請を行う。
※詳細な受給要件等および申請手続きについては厚生労働省HP等を参照してください。



7.今月のコラム  ~脱退一時金の需要増大~

 ACROSEEDの法人顧客の間で、最近問い合わせが増加しているのが「脱退一時金」の申請です。簡単に言えば、「外国人が日本で働いた期間に収めた厚生年金保険の一部を帰国後に返還してくれる手続き」です。


 主に対象となるのは、「技術・人文知識・国際業務」のサラリーマン、技能実習生や「特定技能」で滞在する特定技能者です。当初はサラリーマンが主な対象でしたが、最近では急増する技能実習生や特定技能者の滞在期間あわせて、2021年4月より最高で5年分(60か月)が脱退一時金の対象と変更されました(従来は最高で3年分)。また、還付される金額はお給料額や年金の加入期間などにもよりますが、月給20万円で3年間加入した場合は約65万円、月給30万+賞与50万2回╱年で3年間勤務の場合には125万円近くにもなります。


 コロナの影響等で離職や転職を余儀なくされた外国人も多くいますが、帰国前にこの制度の話をしてあげると皆が身を乗り出して聞いてくれ「よく教えてくれた!」と非常に喜んでくれます。また、外国人が個人で申請するものであり、雇用企業への経済的・事務的な負担もないため、多くの企業ご担当者様が帰国前の外国人社員にACROSEEDをご紹介して頂けます。もちろん、外国人の方がご自身でもできる手続きですが、源泉所得税の還付手続きまで行おうとすると納税管理人を立てたりと、外国人にとってはハードルが高い部分もあり、結局はACROSEEDに手続きを依頼して帰国されるケースがほとんどです。


 コロナ禍で日本からの出国者が増えれば増えるほど需要が増加する業務ですので、日本社会のグローバル化に貢献する弊社としては複雑な気持ちになります。しかし、お客様に喜んで頂けることは士業として最高の報酬であり、入金のお知らせをする際にはこちらもうれしくなります。不本意な帰国を余儀なくされた人もいるかと思いますが、それでも最後に「日本に行ってよかったな…」と思ってもらえればと思い、今日も多くの案件と格闘しています。


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