パブリシティ

無料メールマガジン「人事総務レポート」のご案内

メールマガジン2021年06月

メールマガジン メールマガジン「人事・総務レポート」
2021年06月 Vol.149

1.人事・総務ニュース

「無期転換ルール」見直しへ ~不当な抑制策の規制検討~
 

 無期転換ルールは、平成24年改正労契法で創設されました。その際、附則により「施行後8年を経過した場合」、見直しの要否を検討する旨定められていました。


 これを受け、厚労省では、検討会を設け、改正に向けた議論を開始しました。労契法18条では、有期労働契約期間が通算5年を超えると、労働者に無期転換申込権が生じるとしています。

 

 しかし、通算期間が法定条件を満たしても、権利の行使をためらう(あるいは、よく理解していない)労働者も少なくありません。


 一方、企業側についても、契約の回数・期間に制限を設けたり、クーリング期間を挟み込んだりする等により、転換申込みの抑制対策を講じるケースが散見されます。


 検討会では、無期転換をバックアップするため、阻害要因の洗い出しや、対策の検討を進めます。併せて、「多様な正社員制度」をめぐるトラブル防止策等についても、提言を行う予定です。



試用期間中の解雇は有効 ~同僚へ暴行・暴言繰返す~
 

 有料老人ホームで働いていた従業員が試用期間途中の解雇無効を訴えた事件で、東京地方裁判所は処分を有効と認める判決を下しました。

 

 訴えを起こした従業員は、契約社員として入社した後、正社員に登用されました。同ホームでは、正社員の試用期間を6カ月と定め、不適格と認めた場合は期間途中の解雇もあり得るとしていました。

 

 事件は朝のあいさつがキッカケでした。同僚にあいさつを返さなかった件を注意された際、相手の胸ぐらをつかみ、「お前、やんのか」と暴言を吐き、その後も言い争いを続けたものです。

 

 事情聴取の際には「過去にバイクで事故を起こし、その後遺症で記憶がなくなることがある」などと弁明しましたが、本人はバイク免許を有せず、弁明は虚偽と判明しました。


 裁判所は、試用期間内に「採用前には知ることができなかった不適格性が判明した」として、留保解約権の行使は正当と判断しました。


地方創生へテレワーク推進 ~厚労省はガイドライン整備~

 新型コロナウイルスの拡大により、テレワークを経験する従業員が増えるとともに、地方移住やワークライフバランスの充実への関心が高まっています。政府は、この機をとらえ、「地方創生テレワーク」を推進する方針を打ち出しています。

 

 内閣官房に設置した検討会議では、昨年12月から議論を重ねていましたが、このほど、提言をとりまとめました。新たな働き方として、首都圏等に立地する企業に勤務したまま、地方に移住して仕事をするスタイルの普及定着を図ります。

 

 今後の取組として、企業に対しては、生産性の向上、災害時の事業継続、人材確保、事業拡張・新規ビジネスに取り組む環境整備などに関する情報を積極的に発信していきます。


 一方、厚生労働省は、労使双方のプラスとなるように働き方改革推進にも配慮した「テレワークガイドライン」を公表しました。


 従来の「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」をベースとしながら、対象者の選定や評価制度の整備など、人事労務管理全般をカバーする内容に拡充されています。



2.職場でありがちなトラブル事情

職務転換を拒んだら解雇 ~軽易業務で賃金ダウン~

 メーカーの現場で働くAさんが職務転換の通知を受けたのは、心臓の手術で入院中のことでした。これまで働いていた部署が廃止され、全員が別の部署に異動になるという話です。

 

 勤続30年の会社を去りたくないため、Aさんは、やむなく転換に応じる旨、社長に回答しました。しかし、その後、よくよく説明を聞くと、賃金が大幅に低下するといいます。

 

 専務に問い合わせたところ、「そのとおり。条件が不満なら辞めてもらうほかない」という返事で、話し合いにもなりません。

 

 退職を迫るに等しい態度なので、思いあぐねたAさんは、紛争調整委員会にあっせんの申請を行いました。

 
従業員の言い分

 会社の経営悪化に伴い、職務転換を実施するという話は、半年前から聞いていました。しかし、賃金の引下げとセットとなる内容で、不満な者には解雇をちらつかせるという会社の態度には納得がいきません。

 

 復職は求めませんが、内実としては会社都合の退職なので、経済的・精神的被害に対する補償金として300万円の支払いを求めます。


事業主の言い分

 Aさん一人をターゲットとしたわけでなく、部署の全員に同じ内容の提案を行ったものです。新しい職務は軽易・簡単な作業内容で、賃金の維持は、到底、ムリな注文です。

 

 退職金は全額支払いましたが、やっとの思いで銀行の不渡りを回避している状況で、会社として要求にあるような金額をねん出する余力はありません。


あっせんの内容

 会社側に対し、「退職か、賃金ダウンを伴う異動か、二者択一の選択を強要する」行為は実質的な解雇とみなされる可能性が高く、裁判になれば、解雇無効という結果になるおそれがあると説明しました。  そのうえで、会社財政の許す範囲内で、金銭的解決を図れないかと打診しました。


結果

 会社がAさんへ、80万円を4カ月分割で支払うという条件で、支払日・方法等を含めた合意文書を作成し、労使双方が合意しました。



3.厚生労働省「労働者派遣事業の令和2年6月1日現在の状況(速報)」

 派遣元事業主は、厚生労働大臣に対し、毎年6月1日現在の運営状況を報告する義務を負っています(都道府県労働局経由)。

 

 直近の令和2年の集計(速報)をみると、派遣労働者の総数は156万5799人で、前年比0.2%減という状況です。


 派遣労働者の受入れについては、個人単位と事業所単位で期間制限が課されています(どちらも3年)。しかし、無期雇用契約を結んでいる派遣労働者は、期間制限の対象外となっています。


 このため、有期から無期への転換が進んでいますが、令和2年は、前年に比べ、有期が6万3767人減ったのに対し、無期が6万58人増えています。有期の減少分と無期の増加分が、おおむね釣り合う形となりました。



 派遣全体で、有期・無期それぞれの増減率をみると、無期の10.9%プラスに対し、有期の6.3%マイナスという状況です。


 一方、製造派遣に限ると、無期の19.1%プラスに対し、有期の14.4%マイナスとなっています。有期雇用者が無期雇用者に代替される速度は、製造派遣の方が速い(およそ2倍)ということです。


 派遣労働者の多い製造ラインでも、そのうち、「何年たっても、顔ぶれに変化がない」という時代が到来するのでしょうか。






4.身近な労働法の解説 ~専門業務型裁量労働制①~

 今回から3回にわたり、労基法に定める「専門業務型裁量労働制」について解説します。

1.専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)とは

 業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令および大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。


 どのような業務にもある程度の裁量は与えられますが、専門業務型裁量労働制においては、対象業務が19業務に限定されています。



2.専門業務型裁量労働制の対象業務

 対象の19業務については、細かく規定され、限定されています。今回は、19業務のうち、3業務について記載します。そのほかの業務は、次回以降記述します。


①新商品もしくは新技術の研究開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務


・「新商品もしくは新技術の研究開発」とは、材料、製品、生産・製造工程等の開発または技術的改善等をいうものであること。


②情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。⑦(次回掲載)において同じ)の分析または設計の業務


・「情報処理システム」とは、情報の整理、加工、蓄積、検索等の処理を目的として、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、通信ネットワーク、データを処理するプログラム等が構成要素として組み合わされた体系をいうものであること。


・「情報処理システムの分析または設計の業務」とは、(i)ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定およびその方法に適合する機種の選定、(ⅱ)入出力設計、処理手順の設計等アプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定等、(ⅲ)システム稼働後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善等の業務をいうものであること。プログラムの設計または作成を行うプログラマーは含まれないものであること。


③新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務または放送法に規定する一定の放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務


・「新聞または出版の事業」には、新聞、定期刊行物にニュースを提供するニュース供給業も含まれるものであること。なお、新聞または出版の事業以外の事業で記事の取材または編集の業務に従事する者、例えば社内報の編集者等は含まれないものであること。


・「取材または編集の業務」とは、記事の内容に関する企画および立案、記事の取材、原稿の作成、割付け・レイアウト・内容のチェック等の業務をいうものであること。記事の取材に当たって、記者に同行するカメラマンの業務や、単なる校正の業務は含まれないものであること。


・「放送番組の制作のための取材の業務」とは、報道番組、ドキュメンタリー等の制作のために行われる取材、インタビュー等の業務をいうものであること。取材に同行するカメラマンや技術スタッフは含まれないものであること。


・「編集の業務」とは、上記の取材を要する番組における取材対象の選定等の企画および取材によって得られたものを番組に構成するための内容的な編集をいうものであり、音量調整、フィルムの作成等技術的編集は含まれないものであること。




5.実務に役立つQ&A

退職日に出勤不可か ~出産手当金の継続給付~

  産前休業に入ってから退職予定の従業員がいます。「退職当日に、会社呼出しに応じて出社すると、資格喪失後の出産手当金を受給できなくなる」というウワサを聞きますが、本当なのでしょうか。


 退職して健康保険の被保険者資格を喪失しても、一定の条件を満たす場合には出産手当金や出産育児一時金、傷病手当金、埋葬料(費)を受給できます(健保法104条等)。


 出産手当金を退職後も継続して受給するには、①引続き1年以上の被保険者期間がある者が、②退職時に出産手当金を現に受けているまたは受けることができる状態であることが必要です。


 出産手当金は、被保険者が出産したときに、出産の日以前42日(多胎妊娠は98日)から出産の日後56日までの間において「労務に服さなかった期間」支給されます。


 退職後の継続給付の②の要件を満たすには、退職日の時点で「労務に服さない」状態であることが必要です(協会けんぽ)。退職の当日に出社するとしても、保険証の返還等、事務手続きのみで済ませるべきでしょう。



6.助成金情報 育児休業給付金について

 今回は雇用保険の被保険者が、その一定の年齢に満たない子を養育するために休業した場合に支給される育児休業給付金について説明します。


育児休業給付金とは

育児休業給付金とは、雇用保険の被保険者の育児休業期間中の生活保障です。ここでいう雇用保険の被保険者とは、一般被保険者または高年齢被保険者に限ります。この雇用保険の被保険者が、その1歳に満たない子(パパ・ママ育休プラスの場合は1歳2カ月。保育所等における保育の実施が行われないなどの場合は1歳6カ月あるいは2歳)を養育するために育児休業を取得したときに男女を問わず育児休業給付金が支給されます。ただし、この育児休業を取得する雇用保険の被保険者については、育児休業開始日前2年間に、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある完全月(※)が12カ月以上あることが要件となりますが、過去2年間に疾病・負傷などの理由により30日以上にわたって賃金の支払いを受けることができなかった日数がある場合は、この日数を2年間に加えてよいことになっています(最長で4年間)。

※育児休業開始日が令和2年8月1日以降であって、育児休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12カ月ない場合は、完全月で賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を1カ月として取扱う。

育児休業給付金の支給額

育児休業を開始した日から起算する1カ月ごとの期間を支給単位期間といい、育児休業給付金は、支給単位期間ごとに計算されて支給されることになります(育児休業終了日を含む支給単位期間について、1カ月に満たないことがある場合、暦の日数になります)。支給額は原則として次のようになります。



※1 休業開始時賃金日額とは、育児休業開始前(産前産後休業を取得した被保険者については産前産後休業開始前)6カ月間の賃金を180で除して得た金額です。


※2 支給単位期間に賃金の支払いがある場合は、支給額の減額や支給されないことがあります。

育児休業給付金の注意点

① 育児休業を開始する時点で、育児休業終了後に離職することが予定されている場合は、育児休業給付金は支給されません。


② 育児休業を開始する雇用保険の被保険者が有期契約労働者(期間を定めて雇用される労働者)である場合は、上記で説明したことに加えて、育児休業開始時において、同一の事業主の下で1年以上雇用が継続しており、かつ、子が1歳6カ月までの間(ただし、保育所等における保育の実施が行われないなどの理由により子が1歳6カ月に達した後の期間について育児休業を取得する場合は、子が1歳6カ月に達した後の休業開始時において2歳までの間と読み替えて適用)に労働契約(労働契約の更新が約束されている場合は、更新後の労働契約)の期間が満了することが明らかでないことが必要です。


③ 支給単位期間の途中で離職した場合は、その支給単位期間については育児休業給付金が支給されません。


④ 育児休業の期間中に他の子に係る産前産後休業や育児休業が開始した場合、あるいは対象家族に係る介護休業が開始した場合は、新たな休業の開始日の前日をもって育児休業給付は終了となります。


⑤ 育児休業給付金については専門用語も多く複雑なため、詳細については、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークなどのホームページ等でご確認ください。




7.助成金情報  ~産業雇用安定助成金~

 新型コロナウイルス感染症の影響によって事業活動を一時的に縮小する事業主が、その労働者の雇用を維持するため在籍型出向を行う場合、出向元と出向先双方の事業主が受けられる助成金です。令和3年2月に創設された新しい助成金です。


 雇用調整助成金が休業、教育訓練、出向を行う事業主に対するものであるのに対し、在籍型出向に限定された助成金です。


【対象となる事業主】


 ◎出向元事業主 ・新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由により事業活動の縮小(一定以上の生産指標の減少)を余儀なくされたために、労使協定に基づき労働者を雇用維持のため他社に在籍出向させること ・本助成金の支給対象となる期間に他の事業所からの出向労働者を受け入れ、他の事業所がその労働者について、本助成金、雇用調整助成金(出向)、通年雇用助成金の支給を受けていないこと


 ◎出向先事業主 ・出向の受入れにあたりその雇用する他の労働者を事業主都合により一定期間離職させていないこと ・雇用量の減少がないこと(雇用指標が一定以上減少していないこと) ・自己を出向元とする出向を行い、本助成金、雇用調整助成金(出向)、通年雇用助成金の支給を受けていないこと など


【対象となる労働者】


 出向元事業主に雇用されている雇用保険被保険者(被保険者としての雇用が引続き6カ月以上、解雇や退職の予定がない、日雇労働被保険者でない)


【対象となる出向】


・雇用調整を目的とするものであり、かつ労働者を交換しあうものでないこと
・労使間の協定によるもの
・出向労働者の同意を得ている
・出向元事業主と出向先事業主の契約によるもの
・出向元事業主と出向先事業主ともに雇用保険適用事業所であること
・双方の事業主が資本的、経済的、組織的関連性等からみて、独立性が認められること
・労働者ごとの出向期間が1カ月以上2年以内であって出向元事業所に復帰すること
など


【助成率・助成額】


◎出向運営経費…出向中に要する経費(出向元および出向先事業主が負担する賃金、教育訓練、労務管理に要する経費など)



※雇用維持要件:出向元事業主が一定期間事業主都合の解雇や解雇とみなされる雇止め等を行わず雇用維持をすること


出向初期経費…出向の成立に要する措置に関する経費に対して、出向先、出向元ともに一定額を支給(同一事業主において同一の労働者一人につき1回限り)


例・出向先事業主の負担する出向労働者にかかわる什器、OA環境整備等費用 ・出向元事業所、出向先事業所の就業規則等の整備・改正に係る費用など



【支給限度など】


同一の雇用保険適用事業所につき一年度助成金の支給対象となる労働者500人(年度の最初の出向開始日の前日における事業所の雇用保険被保険者数が500人未満の場合はその人数。ただし10人未満は10人とする)、同一の労働者に対する支給は365日を限度とする。


【受給までの流れ】


出向元事業主と出向先事業主の契約締結・労使協定・出向予定者の同意 → 出向計画届の提出(都道府県労働局またはハローワーク) → 出向の実施 → 助成金の支給申請・受給


Copyright(c) 2018 ACROSEED Inc. All Rights Reserved.