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外国人を雇用する企業の人事総務向けメールマガジン 2022年02月

メールマガジン 外国人を雇用する企業の人事総務向け
メールマガジン「人事・総務レポート」
2022年02月 Vol.157

1.人事・総務ニュース

子育て理由の転勤拒否 ~懲戒解雇は有効と判示~

 転勤拒否を理由とする懲戒解雇を違法と訴えた事案で、大阪地方裁判所は、配転命令は権利濫用に当たらないとして、元従業員の主張を退けました。

 

 裁判で、元従業員は「持病がある子供と高齢の母との3人暮らしで、転居を伴う配転は難しい」と主張しました。

 

 入社以降、グループ企業内で10回を超える配転・出向を経験しましたが、就業場所は一貫して関西地区でした。しかし、今回は、会社が関西・西日本オフィスを閉鎖するため、業務集約先である関東地区への配転命令が出されました。

 

 元従業員が拒否し、懲戒解雇されたため、裁判で争ったものです。会社が数回にわたって説得を試みた際、本人は詳細な説明をしませんでしたが、裁判所は「仮に事情が伝わっていたとしても、配転は権利濫用に当たらない」と判断しました。

 

 判決文では「子どもの通院は月1回ほどで、母も要介護状態にないなど、転勤しても対応可能な範囲だった。配転命令に応じない事態を放置すれば、企業秩序維持に支障を来すおそれがあった」と述べ、懲戒解雇も有効としています。



傷病手当金通算等でQ&A ~改正健保法の取扱いを説明~

 令和4年1月から、改正健保法が施行され、傷病手当金の支給期間通算化や任意継続被保険者の任意脱退等の仕組みが導入されています。厚労省では、Q&Aにより、細かな運用ルールを明らかにしました。

 

 傷病手当金は、従来、支給開始日から1年6カ月を支給期間としていました(途中で復職し、手当金が途切れても期間は延長されない)。

 

 しかし、改正後は「支給開始日から暦日で1年6月の計算を行い、支給日数を確定」します(たとえば、令3・3・4から令4・9・3までなら549日)。途中、復職した場合、1年6月を超えても、支給日数累計がこの日数に達するまで手当金の支給が継続します。

 

 任意継続被保険者は、自ら申出書を提出することにより脱退が可能になりました。月の途中で申し出ても喪失日は一律で翌月1日となります。ですから、その時点では「被保険者証は添付しない」点などに注意を促しています。

 
当事者の合意を前提に ~和解時の口外禁止条項~

 全国労働委員会連絡協議会がオンラインで開かれ、和解時等の口外禁止条項の取扱いについて議論が交わされました。

 

 令和2年末に、長崎地裁で「労働審判の際に、労働者の意向に反して同条項を付けたことを違法とする」判例が出されたことを踏まえたものです。

 

 労働委員会でも、集団調整事件などのあっせんや不当労働行為事件審査の和解時などに、交渉の着地点を探るなかで、口外禁止条項を付すケースが多々あります。

 

 議長は、「和解について第三者に話すのは本来自由」だが、「当事者が、禁止条項の内容を理解して合意すれば有効」と強調。条項を入れる際には、その具体的内容について双方の意向を十分に確認しながら同意を得ることが重要と総括しています。

 

2.職場でありがちなトラブル事情

失業給付までの「つなぎ」資金を要求 ~出社日目前に内定取消し~

 A社に勤務していたBさんは、ハローワークの紹介によりC社の採用面接を受け、内定通知書を受け取りました。

 

 転職に備え、日数的に余裕をもってA社を退職したところ、C社の入社日1週間前に、採用取消の通知を受けました。

 

 「行き場を失った」Bさんは、雇用保険の基本手当が出るまで3カ月分の賃金補償を求めましたが、C社は0.8カ月分を支払うと回答してきました。


 金額面で両者の折り合いがつかず、Bさんは紛争調停委員会によるあっせんを申請しました。

従業員の言い分

 A社の退職は「自己都合扱い」なので、ハローワークに求職に行っても、基本手当の支給は3カ月後(紛争当時の規定)になります。

 

 まさか内定から1カ月ちょっとで取消通知を受けるとは想像もせず、再就職の予定も全く立っていません。基本手当が出るまで「つなぎ」の補償(採用内定時の提示金額の3カ月分)を要求します。


事業主の言い分

 約束した賃金(採用内定時の賃金)の0.8カ月分という金額は、A社を解雇された場合の予告手当の金額をベースに算定したものです。

 

 受入れ予定部門の突然の採算悪化により、採用を断念するほかなくなり、Bさんには大変申し訳ないですが、会社の営業状態からいって要求額を支払える状況ではありません。


指導・助言の内容

 Bさんの3カ月分の支払い要求、C社の0.8カ月分という回答、ともに法的な根拠もなく、妥当な金額とも思えない点を指摘し、金額面での歩み寄りを求めました。


 自社の非を認めるC社の方で、倍額(お詫び料も含め1.6カ月分)という提示がなされたので、それをベースにさらに両者の話し合いを促しました


結果

 C社がBさんに対し、「採用内定時に約束していた賃金額の2カ月分を支払う」という内容で和解が成立しました。



3.総務省「令和2年国勢調査」

 5年に一度の国勢調査(令和2年・人口等基本集計)の結果が、公表されました。2020年10月1日時点でみた日本の総人口は、1億2614万6000人で、前回(2015年)と比べ、94万9000人減少しています。


 都道府県別では、8都県で人口が増加し(増加率が高い順に、東京、沖縄、神奈川、埼玉、千葉、愛知、福岡、滋賀)、それ以外の39道府県は減少しました。


 人口は、労働力と消費の双方を生み出す源泉です。しかし、「増加が加速(増加幅が拡大)」が5都県なのに対し、「減少が加速」は33道府県で、地方の過疎化が進んでいます。


 政府は、Uターン、Iターン、Jターンの推進に努めていますが、効果は限定的なようです。



 高齢化の進行も、経済活力の低下を招くおそれがあります。65歳以上人口が全体に占める割合は、5年前の26.6%から28.6%に上昇しました。


 イタリアの23.3%やドイツの21.7%よりも高く、世界で最も高い水準です。65歳以上の高齢者が就労する場を増やすため、個々の企業は、社内体制の整備に向け、さらに知恵を絞る必要があるでしょう。




4.身近な労働法の解説 ~70歳までの就業機会確保〜高年齢者雇用安定法(2)~

 今回は、高年齢者雇用安定法における70歳までの就業確保措置について解説します。 65歳までは「雇用」を確保する措置(義務)ですが、70歳までは「雇用または就業の機会」を確保する措置(努力義務)という点で異なっています。


1.改正高年齢者雇用安定法

 高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保措置に加え、70歳までの就業確保措置を定めています。就業確保措置は、令和3年4月に施行されました。


2.高年齢者就業確保措置(10条の2)

 定年を定めている事業主、または継続雇用制度を導入している事業主は、以下(1)〜(5)のいずれかの措置を講じることにより、65歳から70歳までの安定した雇用の確保措置((4)(5)は、過半数労組等の同意を得て、雇用によらない措置=創業支援等措置)を講ずるよう努めなければなりません。

(1)定年の引上げ
(2)65歳以上継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)を導入
(3)定年制の廃止
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業


3.高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針(厚労省告示 令2・10・30 351号)の一部

(1)65歳以上継続雇用制度を導入する場合の留意事項

① 65歳以上継続雇用制度を導入する場合において、他の事業主により雇用を確保しようとするときは、事業主は、当該他の事業主との間で、当該雇用する高年齢者を当該他の事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結する必要があること。

② 他の事業主において継続して雇用する場合であっても、可能な限り個々の高年齢者のニーズや知識・経験・能力等に応じた業務内容および労働条件とすべきことが望ましいこと。

③ 他の事業主において、継続雇用されることとなる高年齢者の知識・経験・能力に係るニーズがあり、これらが活用される業務があるかについて十分な協議を行った上で、①の契約を締結する必要があること。

④ 心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由または退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する場合には、継続雇用しないことができること。


(2)創業支援等措置の場合の留意事項

① 前述2.(5)b.に掲げる事業に係る措置を講じようとするときは、事業主は、社会貢献事業を実施する者との間で、当該者が当該措置の対象となる高年齢者に対して当該事業に従事する機会を提供することを約する契約を締結する必要があること。

② 過半数労組等に対して、創業支援等措置による就業は労働関係法令による労働者保護が及ばないことから、創業支援等措置の実施に関する計画(実施計画)に記載する事項について定めるものであることおよび当該措置を選択する理由を十分に説明すること(実施計画に記載する事項について留意点あり)。


③ 創業支援等措置により導入した制度に基づいて個々の高年齢者と契約を締結する際には、書面により契約を締結すること(就業条件を記載すること)。この際、実施計画を記載した書面を交付すること。契約を継続しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられること。契約を継続しない場合は、事前に適切な予告を行うことが望ましいこと。




5.実務に役立つQ&A

事業主に費用徴収? ~社会保険料滞納中ケガ~

 資金繰りの悪化から社会保険料の納付が遅れたとします。滞納中に傷病手当金の支給対象者が出たときに、費用を徴収されてしまうようなことはあるのでしょうか。労災保険にはそういった仕組みがあったと思いますが…。


 健康保険や厚生年金の保険料等の納付が遅れると、延滞金が課せられることがあります(健保法181条)。


 まず、保険者から、期限を指定して督促があり、指定期限までに納付できない場合、未納の保険料に本来の納付期限の翌日から3カ月については年利2.5%、その後は年利8.8%(日本年金機構※延滞金の割合は令和3年1月から12月まで)の延滞金が加算された額が徴収されます。指定期限までに納付すれば延滞金は課せられません。


 労働保険(労災保険料や雇用保険料)の一般保険料の滞納期間中(督促状の指定期限後に限る)に業務災害や通勤災害が発生し、労災保険給付が行われた場合、保険給付額の40%を上限として、事業主がかかった費用を徴収されることがあります(労災法31条)。


 健保の傷病手当金等には、事業主に対する費用徴収の定めはありません。



6.外国人雇用関連ニュース ~知ってるようで知らない「日本の難民制度」(1)~

 最近では日本の難民制度の在り方をめぐるニュースが多く報道されています。とはいえ、一般の方が難民制度に触れることは日常でまず考えられません。そこで、今回は数回にわたり日本の難民制度についてご説明していきます。

1.難民認定とは

 「難民」と一言にいってもその人の事情、地域、時代などによりその意味合いは大きく異なります。入管手続きにおける難民とは、一般的には難民条約と呼ばれる「難民の地位に関する条約」で定義されており、「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないか又はそれを望まない者」とされています。

 この難民に該当する人は、日本の法務大臣に難民であることの認定を受けることができ、この認定があれば難民としての福祉手当などの保護を受けられます。この後に説明する難民認定申請は、申出をした外国人が難民に該当するかどうかを審査して決定するための手続きです。


2.難民認定申請の流れ

日本では法務省の出入国在留管理庁に対して、以下の流れに沿って難民認定申請を行います。



 行政訴訟までを視野に入れた場合、難民と認定されるかどうかの判断は原則として合計3回の機会があることになります。また、難民とは認められませんが、人道的な配慮が必要と法務大臣が判断することにより在留特別許可が付与され、日本への滞在が認められるケースも見られます。


 次回に続きます。



7.今月のコラム ~コロナ禍の外国人雇用で起きていること【技能実習生】~

 世界中で大きな影響を与えている新型コロナウイルスですが、日本社会の外国人雇用にも大きな影響を及ぼしています。本日はACROSEEDに寄せられるお客様からの相談をベースに起こりがちなトラブルや現場で起きていることなどをご紹介します。


【技能実習生】

 現在、日本には約40万人の技能実習生が滞在しています。この人数は就労可能な在留資格の中ではトップで、それだけ技能実習生が日本社会で必要とされていることがうかがえます。


 さて、コロナ禍における技能実習生の一番の問題は「帰国ができない」ことです。日本で3~5年の技能実習が終了したはいいが、帰るための飛行機がそもそも飛んでいない。母国の駐日大使館などがチャーター機を用意することもありますが、その飛行機に乗るだけで帰国希望者間での抽選となり、まずは運試しが求められます。さらに、チケット代が高い。飛行機の便数自体が少なくなっているため運用コストが高くなり、従来のチケット料金の2~4倍にまで料金が跳ね上がっています。とはいえ、帰国旅費は受け入れ団体である事業協同組などが負担することが技能実習法で定められていますので、チケット代については技能実習生が負担するケースはあまりありません。問題になるのは母国に入国時のPCR検査代、国によっては入国後の待機期間中のホテル代等が私費となることもあり、その支払いをめぐりトラブルとなるケースが多くみられます。ちなみに、こちらの費用は帰国旅費ではないので原則は本人負担となります。資力が十分な事業協同組合では半額持つといった話しも見受けられますが、ほとんどの場合は本人負担となっています。


 このような状況になると、技能実習生の中でも帰国時の行動パターンが大きく2つに別れます。1つは日本での技能実習がすべて終了し満足できる貯えもできたので、何としても母国の家族の元に帰りたいケース。もう1つは、「合法的にもっと日本で働ける?神様、チャンスをありがとう!」といったケースです。当然ですが、日本に残る場合には一定期間の新しい仕事を事業協同組合が見つけてくることが義務付けられています。また、新規入国者がいない現状では技能実習生は引く手あまたです。仕事に困ることもほとんどなく、ポジティブに滞在している人もたくさんいます。


 最近のニュースでは「解雇された技能実習生が食事もできない生活をおくっている…」といった悲惨な報道が多い気がしますが、現実的には技能実習法と事業協同組合でがっちり守られているため、極端に珍しいケースかと思われます。ドキュメンタリー番組等ではどうしてそういう状況になったのかは取り上げられないことが多く、恐らくは実習先から逃げ出して不法滞在となった人の話だと思われます。つい最近では岡山の建設会社が技能実習生に暴行をふるっていたことがニュースとなりましたが、これは言語道断で絶対に許せるものではありませんし、このような技能実習生はすぐに保護することは当然です。しかし、実習先から逃げ出す技能実習生のすべてがこのような状況でもなく、受け入れ先が温かく家族同然に接していても、「仕事がきつい」、「もっと高い賃金の仕事に就きたい」、「田舎は嫌だから都会に行きたい」といった理由で失踪するケースも多く存在しています。ですので、「技能実習」と一言にいってもいろいろなケースが混在していることにご留意頂ければと思います。


 最後に受け入れ団体である事業協同組合ですが、こちらも非常に厳しい状況となっています。新規入国の技能実習生がいない、つまり、新しい収益が発生しない状況が続いています。さらに、実習が終了した技能実習生は「特定技能」として他社に転職するケースも多くみられ、頼みの綱である国内入国済みの技能実習生も時間とともにどんどん減っていきます。そのうえ追い打ちをかけるように既存の技能実習生の仕事探しや在留申請(一時的な就労のための「特定活動」への変更)が激増し人手も足りない、チケット代などの高額コストがかかる、こんな状況が続いています。そのため、入国禁止の状況が長引けば体力がない事業協同組はどんどん脱落し、今後は淘汰が進んでいくと思われます。


 連日、オミクロン株が猛威を振るっていますが、どの業界も厳しい状況が続いています。新規入国に際しては一律禁止ではなく、対策強化により本当に安全な方であれば入国が認められることを切に願っています。


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