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外国人を雇用する企業の人事総務向けメールマガジン 2022年03月

メールマガジン 外国人を雇用する企業の人事総務向け
メールマガジン「人事・総務レポート」
2022年03月 Vol.158

1.人事・総務ニュース

賃上げ率2%に届かない可能性も ~国・経営サイドの積極姿勢を期待~

 2021年の賃上げ率は1.86%で、前年を0.14ポイント下回りました(厚労省集計)。足元の経済指標は回復基調にあるものの、オミクロン株拡大をはじめ不安要素も山積です。経済コンサルタントの予測では、2022年の賃上げは2%をはさむ攻防となりそうです。

 

 賃金システム研究所の赤津雅彦代表は、「企業が社内留保を積み上げ、賃上げ原資は不足しないが、日本の景気は世界から取り残されている感がある。積極的な景気対策が打たれず、経営者マインドが冷え込んだままでは、今年の賃上げは1.75%に届かず、実質的な『ベースダウン』となるおそれもある」と警鐘を鳴らしています。

 

 プライムコンサルタントの菊谷寛之代表は、「『新しい資本主義』を掲げる岸田政権は配分政策を標榜するものの、政労使ともに長年の低賃上げを打破する力強いビジョンを描けていない。主要企業の定期昇給は5500円で、ベアを昨年の2倍強(800~1000円)と見込めば、2022年の賃上げは率換算で2.0~2.1%となるが、労使の積極姿勢がその前提となる」と分析しています。

 

「客先常駐」でも在宅勤務OK ~8割のIT企業が実施~

 IT産業では、業務委託契約を締結しつつ、自社社員を客先に「常駐」させる勤務スタイルが広く採用されています。

 

 情報産業労働組合連合会がまとめた「ITエンジニアの労働実態調査」によると、コロナ禍のなか、「客先常駐」でも在宅勤務が行われた実態が明らかになりました。

 

 「運用システム・機材」等の関係で不可能だったという回答もありますが、「半数以上の常駐先で実施できた」と回答する企業割合が8割に上っています。

 

 実施できた理由(複数回答)を聞くと、「常駐先からの要請」が93.5%、「常駐先従業員が在宅勤務になった」67.6%などが上位に挙がっています。顧客の業務ニーズに応える形の「客先常駐」でも、仕事のやり方を工夫する余地は小さくないといえそうです。

 
シフト勤務で「留意事項」示す ~日数・時間数の明示必須~

 サービス業を中心として、需要の繁閑へ対応した「シフト制」が拡大していますが、それに伴う労使トラブル(個別労働紛争等)も頻発しています。

 

 厚労省は、「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を策定するとともに、使用者・労働者向けパンフレットを作成し、周知を図っています。

 

 就業規則に「個別契約による」「シフトによる」と記載するのみでは、作成義務を果たしたことにならず、併せて基本となる始・終業時刻や休日も明記するよう求めました。

 

 労働日・労働時間の設定に際しては、一定の期間に労働する日数・時間数の幅や時間帯などに関し、労働契約であらかじめ合意することが望まれると指摘しました。

 

 シフト割の決定方法(労働者の意見聴取、労働者へ通知する期限・方法)を定めると同時に、確定したシフトの変更方法(申出期限・手続き)等も取り決める必要があるとしています。



2.職場でありがちなトラブル事情

療養休職中に解雇 ~本人はパワハラ起因と主張~

 Aさんは、5年前にタクシー会社B社に入社し、乗務員として働いていました。しかし、営業成績が上がらず、部長から「挨拶がなってない。売上げをもっと上げろ」などと、厳しい叱責を受ける日々が続いていました。

 

 体調を崩し、会社を休みがちになったため、いったんは解雇通告を受けましたが、その後の話し合いで、休職して療養に専念することになりました。

 

 しかし、休職中に連絡があり、約1カ月後に雇用契約を終了するので、退職願の提出と健保被保険者証の返納をするよう求められました。


 話の急展開に納得できず、Aさんは紛争調整委員会にあっせん申請することにしました。

従業員の言い分

 欠勤が増えたのは、部長から執拗なパワーハラスメントを受けたからです。主治医からは休業を命じられ、傷病手当金を受けながら生活しているのが現状です。

 

 実質的な解雇なので、解雇予告手当30万円、年休残日数15日の買取分20万円、およびパワハラの慰謝料50万円の計100万円の支払いを求めます。さらに退職理由は、会社都合に改めるのが当然と考えます。


事業主の言い分

 就業規則では、「休職期間は3カ月を限度とし、回復しない場合には自主退職とする」と定めてあり、それに沿った措置を採ったまでです。

 

 解雇通告ではなく、本人から連絡がない状態が続いていたので、会社として確認を求めたものです。部長のパワハラについては、社内調査でも事実を確認できませんでした。金銭解決には応じてもよいですが、本人都合の退職を撤回するつもりはありません。


指導・助言の内容

 労働契約を終了させる点については、労使間で争いがなかったので、解決金の額と退職理由に関して意見調整を図りました。


 パワハラの事実については事実証明ができないため、それ以外の点で譲歩できる部分がないか、両者に再考を促し、粘り強く合意点を探す努力を継続しました。


結果

 Aさんが自主退職として退職願を提出し、会社が45万円を支払うことで合意が成立しました。



3.日本生産性本部「第10回『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査」

 日本生産性本部の調査によると、2021年に「心の病」が増えたという企業は22.9%、「横ばい」59.7%、「減少」11.1%という状況です。「心の病」が最も多い年齢層は、30代で前年の33.3%から39.9%に大幅増加しました。



 30代はもともと心理的負担の多い年齢階層で、2006年~2010年は6割近い数値で推移していました。近年は低下傾向を示していましたが、2021年は、急角度で反転した形です。


 最近2年間は、新型コロナウイルスの影響で、働く環境が激変しました。メンタルヘルスが悪くなったという企業を対象として、変化を起こした要因を尋ねたところ、「コミュニケーションの変化」が第一位でした(悪くなった86.2%に対しよくなった47.1%)。


 「在宅勤務の増加」「職場の対人関係の変化」については、「よくなった」という回答が「悪くなった」を、若干上回っています。


 上司が身近にいるかいないかは、職務の内容・責任の程度に応じて、プレッシャーの増加・減少のいずれにも作用するということでしょう。個々の従業員の就労環境を踏まえ、適切なメンタルヘルス対策を検討する必要があります。




4.身近な労働法の解説 ~雇入時の健康診断~

 労働安全衛生法において、事業者は労働者に対し、医師による健康診断を行うよう義務づけています。 今回は、労働者を雇い入れた際の健康診断について解説します。


1.雇入時の健康診断

 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、下表11項目について医師による健康診断を行わなければなりません(安衛則43条)。


 雇入時の健康診断は、常時使用する労働者を雇入れた際における適正配置、入職後の健康管理に資するための健康診断です(平5・4・26事務連絡)。


安衛則43条に定める11項目

① 既往歴および業務歴の調査
② 自覚症状および他覚症状の有無の検査
③ 身長、体重、腹囲、視力および聴力検査
④ 胸部エックス線検査
⑤ 血圧の測定
⑥ 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
⑦ 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
⑧ 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
⑨ 血糖検査
⑩ 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無)
⑪ 心電図検査


2.受診対象者

 常時使用する労働者です。 なお、パート・アルバイトについても、次の①②のいずれかに該当し、かつ1週間の所定労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であるときは、健康診断を実施する必要があります。


 なお、4分の3未満であっても、1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の概ね2分の1以上であるときは、健康診断を実施することが望ましいとされています(平31・1・30基発0130第1号)。


①雇用期間の定めのない者
②雇用期間の定めはあるが、契約期間が1年以上※である者および契約の更新により1年以上※使用される予定の者
※特定業務従事者(深夜業等)は6カ月以上


3.実務上のポイント

・「雇入れの際」とは、雇入れの直前または直後をいいます(昭23・1・16基発83号)。

・健診から3月を経過しない者がその健診の結果を証明する書面を提出した場合、当該項目については省略可能です(安衛則43条)。

・定期健診においては医師の判断で検査項目を省略できますが、雇入時検診では検査項目の省略は認められません(年齢にかかわらず、安衛則43条の11項目全てについて行います)。

・費用の負担については、法で事業者に健診実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきとしています(昭47・9・18基発602号)。

・採用選考時の健診について規定したものではなく(平5・4・26事務連絡)、また、採否を決定するために実施するものでもありません。

・定期健康診断と同様、個人票の作成と5年間の保存義務があります。

・所轄労働基準監督署長への報告は必要ありません。

・給食従業員については、雇入れ等の際に検便による健康診断を行う必要があります。




5.実務に役立つQ&A

在職老齢いつ見直しに? ~減額の対象者減ると聞く~

 私はまもなく63歳になり、60歳台前半の老齢厚生年金の受給権を得ます。最近、在職老齢年金の仕組みが変わり、減額の対象にならない範囲が広がったと聞きます。改正はいつからで、私は新制度の恩恵を受けることができるのでしょうか。


 年金制度改正法は、令和2年6月5日に公布されました。「60歳代前半の老齢厚生年金」を対象とする在職老齢年金制度も改正され、令和4年4月1日から施行されます。


 施行日以後に年金の受給権を得た人に限らず、それ以前から年金を受け取っている人も対象になります。


 年金減額の対象になるのは、「被保険者等である日が属する月に、総報酬月額相当額と基本月額の合計額が支給停止調整額(47万円)を超える」人です(厚年法附則11条)。


 新しい支給停止額の計算式は、次の算式1種類のみです。

支給停止額(月額)=(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)×0.5

 この計算式は、基本的に「65歳からの厚生年金」の在職老齢年金と同じです。


 総報酬月額相当額(賞与も含めた月収)と年金の基本月額が支給停止調整額を下回れば、働いていても、減額なしで年金を受け取れるようになります。今回の改正により、年金カットがなくなる(満額受給となる)再雇用者は少なくないはずです。



6.外国人雇用関連ニュース ~「外国人の新規入国制限の見直し」(令和4年2月24日現在)~

 令和4年2月24日、政府において、水際対策強化に係る新たな措置(27)が公表されました。同措置に基づき、同年3月1日午前0時(日本時間)から、観光目的以外の外国人の新規入国が認められます(注1)。


 具体的には、商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)又は長期間の滞在の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者(入国者を雇用する又は入国者を事業・興行のために招へいする企業・団体等をいう。)が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして新規入国が認められます。


 本措置の利用を希望する場合は、こちらの厚生労働省のホームページに掲載されている制度概要資料やQ&A等を御確認の上で、入国者健康確認システム(ERFS)上で申請(注2)を行っていただくようお願いいたします。


(注1)水際対策強化に係る新たな措置(27)に基づく措置の実施に伴い、水際対策強化に係る新たな措置(19)は令和4年2月28日午後12時(日本時間)限りで廃止されます。水際対策強化に係る新たな措置(19)が廃止されることにより、既発行済みの審査済証は全て無効となります。


(注2)電子申請(オンライン)での受付のみとなります。御利用には専用のIDとパスワード等が必要となりますので、こちらの厚生労働省のホームページから取得をお願いいたします。


出入国在留管理庁HPより
1.新型コロナウイルス感染症の感染拡大に係る上陸拒否措置等

(1)上陸拒否の対象地域からの入国


 上陸申請日前14日以内に162の国・地域に滞在歴のある外国人については、「特段の事情」がない限り、上陸を 拒否 (詳細については「新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否について」を参照)


〇「特段の事情」については、オミクロン株の発生を受け、厳格化して運用していくこととしており、入国・再入国を 許可する具体的な例は、次のとおり


①再入国許可(みなし再入国許可を含む。)による再入国
②日本人・永住者の配偶者又は子の新規入国
③「外交」又は「公用」の在留資格を有する又は取得する者(「公用」については、必要性・緊急性が高いもの)
④入国目的に高い公益性が認められる者(特に必要性・緊急性が高いもの)
※例えば、ワクチン開発の技術者 等
⑤その他人道上、真に配慮の必要性がある場合


(2)上陸拒否の対象地域以外からの入国

 上記(1)の措置に併せ、全世界を対象に査証発給の制限が行われており、現在、原則として「特段の事情」と同様 の事情がある者についてのみ査証発給 ※現在、再入国の場合を除き、原則として、入国前に在外公館において査証の取得が必要


2.外国人の新規入国制限の見直しの概要(水際対策強化に係る新たな措置(27))

 下記(1)又は(2)の新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者(当該外国人を雇用又 は事業・興行のために招へいする企業・団体等)が、厚生労働省の入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申 請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則として認めることとする。


(1)商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国
(2)長期間の滞在の新規入国

〇本措置は、令和4年3月1日午前0時(日本時間)以降に新規入国する外国人であって、受入責任者による上記申請が 完了した者が対象
〇詳細や利用方法等については、厚生労働省ホームページ(外国人の新規入国制限の見直しについて) を参照



7.今月のコラム ~コロナ禍の外国人雇用で起きていること【特定技能】~

 前回に続いてコロナ禍の外国人雇用で起きていることをご紹介します。今回は「特定技能」で滞在する外国人についてです。


【特定技能】

 現在の日本社会には6,000名近くの外国人特定技能者が滞在しています。技能実習生が40万人なのに比べればごくわずかですが、制度発足時に新型コロナウイルスの影響が生じたため、ほとんどの方が海外から入国することができず、現在日本にいる方は技能実習が終了した後、そのまま日本で働き続けるために「技能実習」から「特定技能」へと変更した方が大半を占めています。


 また、一部では大学を卒業した方が「技術・人文知識・国際業務」から「特定技能」へと変更した例も見受けられます。介護職などで多いのですが、企業があてにしていた技能実習生が入国できず現場が回らないため、本来は技能実習生の通訳・まとめ役として採用された人材ですが、現場の穴をうめるために雇用先から頼まれて一時的に「特定技能」となっているケースなどです。


 このような特定技能者ですが、最も多いコロナ禍でのトラブルはやはり解雇や給料の不払いなどです。前回お伝えした「技能実習生」は技能実習法と受け入れ団体である事業協同組合でがっちり守られているのに対し、「特定技能」の場合は一般的な会社員とさほど変わりません。雇用企業との雇用契約により通常雇用されているだけであるため、もちろん労基法等の適用はありますが、経済変動などで解雇されたり賃金が支払われないといったケースも十分に考えられます。


 特に状況が厳しいのは飲食業、ホテル、ビルクリーニングなどです。飲食、ホテルは「やはり…」といった感じですが、ビルクリーニングは大型商業施設の閉鎖などで職に溢れるケースが目立ちます。ちなみに、受け入れ企業は法律で定められた「特定支援」という一定水準以上のサービスを特定技能者に提供することが義務受けられており、その中には離職時の職探しなども含まれています。そのため、当初はショッピングモールやレジャー施設などで働くことが決まっていた外国人が、小規模ビルの清掃などに転職する例が見受けられます。皆さまのオフィスやマンションなどでも、ここ2年ぐらいの間にベトナムなどの外国人の方が清掃にあたっている風景が増えたのではないでしょうか。


 このような特定技能者ですが、基本的なセーフティーネットは雇用保険の失業給付が中心となります。とはいえ、原則として1年以上(解雇などの場合は例外で6か月以上)雇用保険に加入いていなければならず、入国直後などでこの要件を満たしていなければ支援は受けられません。ちなみに、生活保護は原則として日本国籍者が対象となり、外国人の場合は永住者、日本人の配偶者などが対対象となり、特定技能者は対象となりません。また、失業給付が受けられたとしても最低の30日分などである可能性が多く、多くの場合は帰国が現実的な選択肢として考えられます。「技能実習生」の場合と同様ですが、そもそも本国が受入れしてくれず帰国できない、受入れが可能でもチケット代が高すぎて帰れない、このような状況が続いています。当然、日本の市区町村役場などにも多くの相談が寄せられていますが、基本的な対応は貸付制度の案内となっています。それでも生活に困る場合には、各国の大使館で相談するなどの指示が出されているようです。


 技能実習生に比べて自由度が高い反面、自己責任の元、十分な保護がない特定技能者の場合、より厳しい状況に置かれている人も多いようです。最近、路上で自作のお菓子などを売って生活費を稼いでいる外国人を見かけることも多くありますが、このような境遇の方かもしれません。苦しい時はお互いに助け合う思いやりの気持ちがより求められているようです。


 次回は「技術・人文知識・国際業務」の現状についてお伝えいたします。


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